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”
「蘭、本当なのか? 番になったというのは?」
養父が、真剣な眼差しで尋ねる。蘭は逡巡した。合意なく噛まれた、そうぶちまけるべきか。あるいは、他の言い逃れを考えるか……。
――いや、待てよ。
蘭は、思い直した。考えようによっては、チャンスではないのか。陽介の正式な配偶者になれば、必然的に勲と接触できる。ここまで陽介と関わったのだ。この際、白柳家に入り込むとするか。そして、勲をつぶすのだ。
――毒を食らわば皿まで、だ……。
「はい」
にっこり微笑めば、養父母の顔はぱあっと輝いた。
「さすが、責任感のある方ねえ」
養母が、嬉しそうに言う。養父も大きくうなずいた。
「じゃあ、もう決まりじゃないか。蘭、お前もいい年なんだから、ごちゃごちゃ言ってないで身を固めなさい。会社を辞めたと言うが、逆にいい機会だ。アルファと結婚するのが、オメガの幸せだぞ? ずっと心配していたが、陽介先生のような立派なアルファにもらってもらえて、よかったじゃないか」
心配なんかしていなかったくせに、と蘭は内心毒づいた。養父母に、自分に対する愛情がないのは、わかっている。蘭は、養父母に養護施設から引き取られたのだが、その時点で彼らには、二人もの実子がいた。それなのに養子を迎えたのは、社会的評価を上げるためだった。養父は、今の会社を一代で築き上げた。富を得た次は、名誉が欲しくなったのである。
――まあ、大学まで出してもらったんだから、文句を言える立場じゃないけど……。
「先生は止してください。結婚を認めていただいたのなら、もう家族でしょう?」
陽介が、にこやかに口を挟む。それもそうだ、と養父は相好を崩した。またもやワインのグラスを口に運びながら、彼はふとこんなことを漏らした。
「蘭がオメガだとわかった時は、養子なんか取るんじゃなかったと思ったけどなあ。こんな玉の輿に乗れたんだから、引き取ってやった甲斐があった」
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