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 ――それが、本音かよ。  蘭は、ぐっと唇を噛んだ。市川家に引き取られたのは、蘭が十歳の時だ。バース性は、まだわからなかった。二年後の検査でオメガと判明した時、養父母は何も言わなかった。だが、内心ではそんなことを考えていたのか……。  養父はすっかりできあがっているらしく、失言にも気づかない様子で話し続けている。 「一流新聞社に入って、これで少しは世間に自慢できるかと思ったんだがなあ。あっさり、辞めてしまうし……。何のために、金をかけて大学まで出してやったんだか。まあでも、今度の結婚でプラマイゼロということで……」 「お父さん!」  さすがに焦ったのか、養母が養父のひじをつつく。その時、陽介の静かな声が響いた。 「市川さん。先ほど僕は、もう家族だ、と申し上げましたよね? それは、あなた方が蘭に愛情を持っていると信じていたからです。でもそうではなく、蘭を道具のようにしか考えていらっしゃらないのなら、その言葉は撤回します」  ――陽介……?  蘭は、陽介の横顔を見つめた。彼の眼差しは、怒りに燃えていた。 「い、いえ! 違うんです。お父さんたら、酔ってめちゃくちゃなことを……。陽介さん、すみません」  養母が、あたふたと頭を下げる。だが陽介の表情は、変わらなかった。 「僕ではなく、蘭に謝ってください」 「いや、えっと……」  ようやく事態の深刻さに気づいたのか、養父がうろたえ始める。そんな彼を見つめて、陽介は冷たく告げた。 「何より、オメガ性を理由に蘭を貶めるのなら、僕はあなた方を決して許しません。たとえ蘭を育てた方々だろうが、どんな目に遭わせるかわかりませんよ? 覚悟なさってください」

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