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第39話
「もう、もう無理だってば!雪ぃ!もう…やめっ…やめろぉ!いや…っやだぁああああああ!」
部屋に響くのはジャラジャラと激しく揺さぶられて鳴る鎖の音と俺の喘ぎ声と謝罪と赦しの言葉だけ。
雪は何も言わず、黙ったままで俺を抱き続けた。
「いい加減に…してくっ…れよ。雪、もういい加減…何かしゃべ…ってくれ…っ!」
一度抜かれた雪のがまたも俺の胎内をギチギチとこじ開けていく。
何度も何度も…それでも雪は黙ったままで俺を見下ろし、腰を動かし続ける。
「お前が…っ!お前が、俺に夕を…あいつをよこした…んだろっぅあああああ!」
奥の奥、腹までこじ開けられて快感も痛みもぐちゃぐちゃで、それでも激しく突かれ揺さぶられて、雪への許しの言葉を口からこぼし続ける俺の首輪の鎖がその振動に耐えかねてついに天井から外れた。
鎖が落下すると共にその重さでガクンと頭が下を向く。それでも止まることのない雪に揺らされるがままに頭も身体も振られるのを止めることもできないほどに全身に力が入らない。目も虚ろになり、口からはもう言葉は出て来ず、ついに音が遠くに聞こえ出した俺の耳に微かに雪の声が届いた。
「宵…俺のことも忘れてしまうのか?俺が誰なのか、俺と一体どう言う関係なのかも…夕を忘れてしまったみたいに…」
雪がようやくその重い口を開き呟く。
「俺は全て覚えてる。全て。なのに宵は…何でだっ?」
そう声を上げながら、その感情をぶつけるように俺を激しく厳しく突き続けた。
「忘れ…ない…雪のこと…忘れな…いから…もう許し…て…」
まるでうわ言のように雪に許しを乞う俺に、雪の視線がじっと注がれた。
「なら、俺は誰だ?宵、俺は一体、何者だ?」
突如、雪の腰が止まり、俺の頭を掴み顔を上げさせて尋ねる。
「雪は…雪は…俺の…俺は雪と…雪…と俺…は…」
分からない… 雪は一体何で俺を抱いてる?俺は何で雪に抱かれてる?俺は何でここにいる?俺はいつからここでこんな風に…生きているんだ?
「俺は…誰だ?」
バリンと何かが割れた音がした。
「ぁあああああああっ!」
同時にイき果てた俺の掴んでいた頭をゴミ箱に捨てるようにポイっと落とすと、雪がため息をついて呟いた。
「やっぱりダメか…夕も俺も自分のことも忘れてしまったか。やっぱり心が壊れるとダメだな…これじゃ、ただの人形だ…」
「だったら僕にちょうだい!」
バタンと扉が開いて、俺の目の前で消え去ったはずの夕が駆け寄ってベッドにとすんと乗っかり、その上で動かなくなったままの俺の頭を取り上げて自分の胸元に抱き寄せた。
「もともと宵は僕のなんだから、僕がもらってもいいでしょ?」
夕の胸元からダメだと言いながら、俺の頭を再び取り上げた雪が、にまぁと笑った。
「あげないよ。どんなに夕との絆や思い出があっても、それは俺だって同じだ。だから宵は夕にあげないよ。それに宵は病気も怪我もない。それは心も同じこと…だから壊れてもすぐに、特に今はすぐに治る…」
フンと鼻を鳴らした夕が、いきなり俺の下半身に顔を近付けた。
いきなり熱くとろんとした中に下半身が咥え込まれ、その反射でビクンと身体が跳ねる。
「夕、何をやってる?」
雪が呆れた声で尋ねるが、夕は素知らぬ顔で俺のを刺激し続ける。
「宵は僕のものでもあるんだから、僕が何をしたっていいでしょ?もう、ずっと我慢して来たんだ。それにすぐに治るって言うけれど、刺激を与えたらもっと早く治るかもしれないし…大体あれだけやることやった雪には言われたくないんだけど…?」
「縛り直した途端に、強気に出るか…それに、一度宵の心が壊れる音が聞きたいと言ったのは夕の方だろう?」
「だって、イくほどにいい音だって雪が言うから…本当にいい音だったなぁ。僕も廊下で聞いててイっちゃったくらい…ふふふ。」
縛り…直した?
聞こえ始めた耳に懐かしい夕と、雪の声が届く。
「あぁ、そろそろ時間のようだ…宵、宵!」
雪の声に夕が俺のを口から外し、ぎしっと音を立てて近付いてきた。
「夕…がいる?夕…は俺の前からの…恋人で、雪が縛りと共に呪った。思い…出した。でも、夕との縛りは雪が消したはず。それで雪と愛し合うようになったのに…何でまた俺は夕を…抱きたいと思っているんだ?愛しているって言うこの感情は何で…だ?そして同じように雪も愛し…抱かれたいと…そう思うこの感情は…何なんだ?」
「あぁ、戻ったか…」
雪が俺の鎖を再び天井に付け直す。それを見ながら夕が俺の胸に顔を埋めた。
「お帰り、宵。僕達ね縛り直したんだ…僕が宵のお父さんに助けられて、再び夕としてこの世界に戻り、その記憶も取り戻すことができた。そうやって何回も何百回も僕がこの世界と天を往復する度に、雪は宵を探そうとする僕を見つけ出しては色々としなければならない…だったら僕も二人と同じように不老不死にして、自分達の身近に置いておいた方が楽だって、よ・う・や・く気が付いたんだよ…ねぇ、雪?」
大きなため息を吐きながら頷いて雪が夕の話を引き継ぐ。
「俺と宵の縛りに夕を入れて縛り直した。夕が何かをして俺たちのこの生活が他の者達に破壊されたくはないしな。だがそれも宵の気持ち次第だった。そう、あれは宵にまだ夕への想いがあるのか確認する為の人形だったんだ…なければ縛れなかったのに…悲しみと絶望で、今度こそその魂を消滅させる事もできたかもしれなかったのに…あぁ、くそっ!」
「ふふふ。だから宵はまだ僕を愛してるって言ったのにさ。確認しなきゃ分からないとか言って、自分で僕の人形を作って宵に愛させて…自分の思い通りじゃなかったからって宵に八つ当たりして、宵の心まで壊しちゃうんだから、本当に雪ってヤバいやつ…でも、あんなにいい音じゃ、その気持ちもわかるけど。ねぇ、それよりも宵、僕に挿入れたい?人形じゃない、本物の僕の、夕の中に…宵、どうする?」
「…れたい…夕の中に挿入れたい…それで、雪に突かれたい…なぁ、これが俺達の新しい縛り…なのか?」
「そうだよ、宵。俺と夕に挟まれて、永遠に愛し愛されるんだよ、宵は。」
「永遠に3人で…?」
「宵は嫌?」
夕の腰が俺に向かって近付き、俺の下半身に擦り付けてくる。手の不自由な俺には夕の腰を掴むことはできない。もどかしそうに腰を動かす俺を見て、夕が雪を見ながら意地悪そうな笑みを浮かべた。
「嫌じゃない…いいや、すごく欲しい。夕が欲しい!だけど何でだ?夕からも雪からも逃げたいと思う、あふれ出てくるこの気持ちは…何なんだ?」
訳のわからない自分の気持ちに頭を振りながら声を上げる。
そんな俺に声をかけながら、雪が俺の身体を抱き寄せて奥に擦り付けてきた。
「だって…そっちの方が楽しいだろう?届きそうで届かない。宵の身体のように…俺と夕に愛されてもなお宵は俺達から逃げ続ける。心も身体も従順なんて…そんなのつまらないじゃないか?!」
雪に刺激されて硬くそそり立つ俺の下半身に手を添えて、自分の蕾をそれでこじ開けながら夕が言った。
「僕は…宵を追いかけるの…好きだから…ずっと、ずっと…追い続け…て来たし…はぁああああん!やっと…宵が…僕の中に…宵がいる…んん…あああっ!」
「まったく、最後まできちんと話せないのか?まぁ、そう言うことで、俺と雪はこの先も宵を追い続け捕まえ続ける。お前がどんなに身体も心も壊そうが俺達はお前をずっと永遠に愛し続け追いかけ続ける。」
「俺もただ二人を愛するだけじゃ…ダメなのか?」
雪が腰を動かして、俺と夕を突く。俺と夕の二人の身体と声が重なり合っていく。
「宵は鎖が似合うからね…ぁああああ!」
「あぁ、鎖で繋がれている宵が、それでも逃げようとして抗う姿に俺も夕も欲情するんだ…だから宵は俺達からずっと逃げ続けて…そして、愛して。」
「ぁあああああっ!雪ぃ!夕っ!もう…イっちゃ…イ…っくぅうううう!」
3人の身体が重なり合い、胎内に熱が広がっていく。
もう、このまま溶け合うように眠りたいと思う心の横で、逃げる算段をする俺がいる。
雪に木っ端微塵に壊されたはずの心はいつの間にか修復され、光に照らし出された俺の影が雪のそれに変わり、にまぁと笑った。
また壊してあげる…永遠に終わらない俺達の追いかけっこ…俺と夕と宵の終わらない永遠の日常を始めよう…
雪の声が聞こえる。
その横で俺に微笑みかける夕。
差し伸べられた二人の手を振り払って歩き出そうとする俺の手を、無理やり掴んだ二人に挟まれた俺の終わらない呪われた永遠(日常)が続く。
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