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紫陽花

「おや、すとれーじの空きが少ないねぇ。 危ない危ない。 えすでぃーかーどを入れ換えないと」 ばあ様は引出しを開け、新しいmicroSDのパッケージを取り出した。 「備えあれば憂いなし。 これで激写ちゃんすもばっちりだねぇ」 ニコニコしながらmicroSDを入れ替える。 取り出した方はケースに入れて引出しに仕舞った。 「もうちょっとねえ、容量の大きいのがあれば良いんだけど…」 馴染みの家電量販店で一番容量の大きいものを購入しているが、処理速度が早く容量もかなり大きめの物の筈なのに早ければ一か月くらいしか持たない。 「ふぬぬ…」 自分が子育てしている頃はあまりに激動な時代過ぎて激写どころではなかった。 当時のカメラは外国製で高価であったため、なかなか手が出せなかった。 本宮はともかく、外宮がある場所は平野。 空襲警報が鳴る度に子供らを抱えて避難するのが精一杯であったのだ。 ヘソクリで質の良いカメラを買ったのは、子育てが一段落して孫が生まれたあたり。 もちろん八ミリカメラも買って激写しまくった。 曾孫達が生まれてハンディカムを買い、ガラケーからスマホに切り替えてからも激写はばあ様のライフワークであり続けた。 孫や曾孫それぞれを写したネガフィルムやビデオテープ、ディスクやSDカードの記録をキチンと整理して分類してもいる。 「ふっふっふ…」 そんなばあ様の激写熱は白寿をとうに越えた今、とどまるどころか更に加熱している。 曾孫の守弥が彼方の世界から連れ帰ってきた咲良が可愛くて仕方ないのだ。 「でじたる一眼もいいけど、鳥瞰というか俯瞰の角度も欲しいんだよ…。 式に飛んで貰うのもいいんだけど、やっぱりどろーんも捨てがたい…」 取り寄せたカタログ1つ1つをばあ様は真剣に検分していった。

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