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新居編 10 花ははしたなくも、したたかに

 一人だったら知らなかった心地良さに柔らかい溜め息が溢れた。 「はぁ……」  敦之さんの体温がすごく好きなんだ。 「……拓馬」  優しく名前を呼ばれて、視線を向けると頬を撫でてもらえた。そっと、花にでも手を添えるように。そんな扱われ方がくすぐったくて、気持ち良くて、自然とその手を追いかけるように首を傾げる。 「最初はキスも知らなかった君が」  言いながら、俺の唇に触れて。丁寧に重ねた唇を開いた隙間から舌を絡められた。濡れた音を立てながら俺も舌を擦り合わせて、敦之さんにしゃぶりつく。 「……ン」  少しはしたないくらいにするのが好きなんだ。俺。 「はぁっ」  それから敦之さんも。このキスが好き。 「こんな大胆でやらしいキスをするようになった」  教えてくれたのは敦之さんでしょう? 一人じゃ知ることのできなかったことだもの。 「可愛いな」 「ン」  そう囁いて、頬にキスをして、首筋にまた一つ印をくれた。そのままキスは乳首を噛んで、咥えて、甘い声を溢す俺をお構いなしに煽るように脇腹、おへそ、そして、薄いと心配される身体をひっくり返されて――。 「やぁぁっ」  後で敦之さんのを咥える奥に口付けられた。 「あっ……ン」  たまらなくて、つい、敦之さんの舌を締め付けてしまう。これ、そんなところを、こんな綺麗な人に唇で開かれるのは、恥ずかしくてたまらない。でも、ものすごく、蕩ける。 「あ、あ、あ、あっ」  ものすごく恥ずかしいのに、すごく……興奮してしまう。 「敦之さ、んっ……俺、も」 「……」  濡れた身体をくねらせて、背後にいた人を抱き締めた。 「俺も、敦之さんの……」  そそり立っている逞しいそれに口付けた。 「ン」  咥えて、口の中で彼を濡らして、それから口を離して、先端に口付ける。愛しい人に見せつけるように、舌を使って、教わった通りにできるよって、上手に舐めて。 「ん……ン」  根本にちゅぅって音をさせながら吸い付いた。 「君を独り占めできる」  優しく髪を撫でられて、そんな言葉にそそのかされて、もっと舌も唇も大胆になっていく。貴方のことがどこもかしこも愛しくてたまらないって、この舌で、唇で伝えるように。舐めて、しゃぶりついて、唇で扱いてから、そっともう一度キスをした。  貴方が欲しいですと、伝わるように、そっとペニスに口付けた。 「違います」  早く、欲しいと、伝わるように身体を開きながら、抱き締めた。 「俺が、貴方を独り占めするんです」  そう耳元で囁きながら。 「あっ」  押し倒されて、覆い被さられたまま、敦之さんに貫かれた。 「あああああああっ」  嬉しくてたまらないんだ。貴方に開かれるのが。こうして、自分の身体の奥で大好きな貴方を感じられるのが。 「あ、イッちゃ……」 「拓馬」  だから、貴方に抉じ開けられた瞬間、達してしまう。  びゅくりと弾けて、お腹の上に飛び散った白を拭う暇もなく、敦之さんが中を攻め立ててくる。何度も力強く、でも優しく沈み込むように俺の中を抉じ開けていく。 「やぁぁっ……今、まだっ」 「拓馬」 「あ、あ、あ、あっ」  奥が貴方欲しさに開いて。 「はぁっ」 「拓馬」 「あっンっ」  名前を呼ばれただけで嬉しそうにペニスに絡みついて。 「あ、ン、ダメ、またイッちゃう」 「あぁ、拓馬の中がすごいよ」 「あっ」 「絡みついてくる」  だって、貴方のペニスにこうして可愛がられるのがひどく気持ちいいから。 「やぁ」 「たまらない」  たまらないのは俺の方。貴方に貫かれて、止まることなく突かれて。 「拓馬」 「あっ」  前立腺を擦られて、切なげに中がぎゅっと締め付ける。そして、前ではとろりと濡れた自分のそれが貴方の腰つきに合わせてピクンと揺れてる。 「あ、あ、あ、あっ、そこばっかりされたら」 「あぁ、ここをこうすると」 「やぁっ……あ、ンっ」 「君の中が俺を可愛がってくれるんだ」 「あ、あ、あっ、あンっ」 「それがたまらなく気持ちいい」  嬉しくて、また、もっと中がヒクつく。きゅうぅって、絡みついて、貴方のペニスをしゃぶって、物欲しそうにうねるんだ。 「すごいな……」 「あぁぁっ」  奥をググって抉じ開けられて、中が嬉しそう。悦んでる。ほら。 「もってかれそうだ」 「あ、だって」  欲しいんだもの。 「あ、の……敦之、さん」  こんな時に言うのは、おかしい、かな。変なタイミング、かな。でも、今日はゴムしてるでしょう? だからね。 「拓馬?」  腕を伸ばすと自然と身体を丸めて俺が抱きつきやすいようにしてくれるこの人の首にぎゅっとしがみつきながら、その耳元で囁いた。 「今度、休みの時は、中にください」  優しくて紳士な人だから。 「敦之さんの、欲しい」 「全く、君は」 「あっ!」  奥をクンって突かれて、叱られた。 「そんな可愛いおねだり、俺は教えてないよ?」 「やぁっ」  そう、教わってない。キスもセックスも、愛撫の仕方も愛撫の心地よさも教えてもらったけれど、これは覚えたんだ。 「あ、あ、あ、激しっ」 「拓馬」 「あ、イクっ、イッちゃうっ」  この優しい花のように美しい人を独り占めしたくて、また抱いて欲しくて、一生懸命に自分で覚えたの。 「あ、あっ」 「っ、拓馬」 「あ、あああああああああっ」  一番奥を貫かれながら、達した。びゅくりと弾けて、お腹の上を濡らしながら。 「っ…………ン」 「はぁ、拓馬」 「あっ、ン」  身じろがれて、ペニスに感度が振り切れてる中がきゅううってしがみつく。 「困ったな」 「?」 「君は明日仕事なのに」 「……」  愛しい人に口付けた。 「俺も、困りました」 「……」 「明日、仕事なのに、まだ」  できるだけはしたなく見えるように脚を広げて、愛撫にピンク色になった乳首を自分で触って、まだ中で脈打つ逞しいペニスが入っているところをもう片方の手で触れて。 「まだ欲しいです」  これは一生懸命に覚えたんだ。貴方を少しでも独り占めしたいと俺が覚えた。これからもずっと、貴方のことを独り占めしたくて、そう――。 「だから、してください」 「……」 「もっと、して」  おねだりをした。

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