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第6話

「これがプリンスちゃんのお気に入りの餌一覧です!」 「なるほど、かなり偏っているな。水や氷属性の魔物に動植物におやつに魔石か。まさか魔石を食べるなど……。な! 水は魔力水しか飲まぬだと!? っていうか、妃よ、これって予算……」 「竜育成は国策事業ですわ!」  プリンスちゃんがいるからと、寝室からも追い出され気味な皇帝が妃殿下を見る。ツーン。 「これは偏食竜にしか無理ですね。この食生活は普通に辛いです。人間で言うなら、朝昼晩おやつ、全て辛い料理、もしくは甘い料理で統一するようなものです。一食でも人を選ぶ上に毎食となると普通、嫌になります」 「キュイ! キュイ!」  俺はやれますぜ! とアピールする皇帝の愛竜、グレート。だが、皇帝は首を振った。 「グレートよ。お前はもう成竜であろう」 「キュー!!」  グレートは悲しみの叫びを上げる。   「ふむ。しかし偏食か。芸術神の子と技工神の子が確か多かったな。しかし、気難しい子も多くなる。これに商業神の加護を混ぜて……ふむ。まあ、強い竜はエステスリーカに任せてあるのだ。私はそれを信じて趣味に邁進すれば良い。今言った組み合わせの始祖竜はいるか? グレートと掛け合わせたい」 「技工神を祀る神殿がそのような組み合わせの子を育てております」 「ほう」 「しかし、気難しいメスのようで、中々種付けが上手く行っていないと」 「みな考えることは同じか、おいでグレート。我らも求婚に行こう。そして次の子を育てるのだ」 「キュキュー?」 「グレートよ。新たな子が生まれても、汝は捨てない。ただ、次に血筋は繋がねばならぬ」  そこで、帝妃に抱っこされて虎視眈々と見守っていた幼児が声を出した。 「おじいたま! おじいたまは新たなあかちゃんの世話にしゅうちゅーしてください! わたくちがグレートをしっかりと受け継ぎ、きちだんにはいりましゅ!」 「まあ! 凛々しいわ。将来有望ね」 「キュー」  オロオロと皇帝と小さな皇子(三才)の顔を見比べるグレート。 「いいえ、父上。父上はグレートを責任持って最後まで可愛がるべきです。グレートの子供は私に! お任せ下さい」  第一皇子殿下がキリッとした顔で告げる。  皇帝には6匹の小竜の権利がある。しかし、皇帝と言えども、王家にくだされた大切な子竜の全てを好き勝手する権利はない。  グレートやプリンスが例外で、専門家に預けて任せねば駄目なのだ。  ましてや、国の代表となるかもしれぬ竜である。当然であった。  なので、皇帝一家にとっても、竜は取り合い、順番待ちなのである。    そもそも唯一竜を実践可能なレベルまで育て上げ、神様が本当にいる世界で架空の竜神を国教とする竜大好きな国民性である。  取り合いにならないはずがなかった。  竜を立派に育て上げるというのは、帝国全体が夢見るストーリーであり、育て終えた豚竜でいいから飼いてぇなぁと夢見るのが最近の帝国民であり、今後平民に対しても門戸を開け、かなり拡大されるという噂の始祖竜騎士団に入る事を目標として、少年達はこぞって枝を振った。  なお、実用化したら出自を問わぬ黒狼騎士団、全てが高位魔法使いの魔法騎士団にも竜は配備される予定である。豚竜でもいいからと竜を望む部署は多い。  その為のノウハウを得るための少年騎士団である。  この帝国であれば、1000年後、一家に一匹が実現するかもしれない。  愛は全てに勝たないが、かなり有利になる要素ではあるのだ。

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