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※第1話
“最初”は、些細なことがきっかけだった。
「なぁ、七世 は キスとか…したことある?」
中学に上がり、そういうことに興味を持ち始めた瑛 は、ベッドメイキングをしている使用人に、そう声を掛けた。
「…まぁ、それなりには」
眼鏡越しの切れ長の目が ひどく色っぽかったことを、今でも鮮明に覚えている。
「じゃあ…教えてよ」
「…それはできかねます。キスは 好きな人とするものですから」
「俺…好きだよ、七世のこと。七世は違うの?」
「そういうわけでは…」
「だったらいいでしょ?…教えて」
訴えかけるような瞳で 『教えて』と口にすれば、七世が逆らえないのは分かっていた。
「…二人だけの、秘密ですよ?」
「うん…」
男が口にした“二人だけの秘密”。
その響きは 妙に甘やかで。
「瑛さま、目を閉じてくれますか?」
「…うん」
柔い唇が触れた瞬間、瑛は確信した。
──堕ちる、と。
あれから四年。
高校二年になった瑛と七世の関係は、より深いものになっていた。
「…っ、あ…きら……さ、…ぁ…あ」
寝室に響く、粘着質な音と艶やかな男の嬌声。
家族が寝静まった夜更け。
鍵のかけられた防音の部屋。
骨っぽい体を映し出す暖色の灯り。
すべての条件が、“この”状態を創り出すために準備されたもののような気がした。
「はぁ…っ、何か…するたび エロくなってない?」
「ぅ…あ゙、…ぁあ……っ」
悩ましげなその声が、加虐心を刺激する。
シーツを掴み、頭を垂れたその姿は、いつも見ている七世の姿とはまるで違っていた。
「…も、…で…ます……でちゃ…ぁ、…う!」
「…キツ……っ、…俺も…やばい」
シーツを汚さないようにと装着したコンドームに、七世が精を吐き出すと、それに合わせて後孔も収縮した。
強く屹立を締め付けられた瑛は 堪らず、スパートをかけるように 七世の体を貪る。
「ひ、…あ……っ、……ゃ……!」
声を出すこともままならなくなった男は、白く塗りつぶされた視界の中、必死に意識を手放すまいとしていた。
しかし、七世の限界を知らない瑛は 獣のように腰を揺さぶり続ける。
「はぁ…はぁ…、も……イ、く…っ!」
最奥を穿たれ、意識を飛ばした七世の中で、精が弾けた。
ぴくぴくと痙攣する男のソコから 性器を抜き、汗で髪が張り付いたうなじに、軽くキスを落とす。
瑛は慣れた手つきで後始末をし、七世の隣で眠りについた。
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