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第1話 コレ。
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「…おにーさん、一晩俺を買わない?」
襟元を少し伸ばして屈みながら、熱を持った目で相手を見る。
相手は戸惑う素振りを見せながらも、視線はしっかりと服の中に向けられていて。
……よし、いけた
猥雑なネオン街とは対象的な暗い雰囲気を纏った路地裏で、今日もまた、昨日とは違う人に身体を売っている。
幸いなことに、俺はどうも男を惹き付けやすい体質らしい。
知らない人と、何やって……
馬鹿みたいな考えが一瞬頭の片隅に浮かぶが、男の人の声によってすぐに消えてしまう。
「ユイくんだっけ?何歳なの?」
「ッヘ、……あっ、20 です」
「え、めっちゃこーゆーの慣れてる感じだったのにそんな若いの。
何、…お金に困ってるとか?」
…半分当たりで、半分ハズレ
「………」
「…まぁ、なんでもいーけど。でも、こんなにエッチな服を着て、顔赤くして…、相当悪い子だね………」
そう言って、おにーさんは息を荒くしながら、ゆっくりと俺のお尻に手を伸ばす。
「……うん。 俺、悪い子だから…、 …だから、早くホテル…行こ?」
−−−−−−悪い子だから。
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「ッひぁ…っあぅ、…ぁ…おに、ッさ、…もッい、くっ…」
「…ッハ ユ、イ …俺もッ ……ッツ」
その声と同時に全身が粟立ち、肉壁が淋しそうに収縮を繰り返す
「っ!…ッい、ッゥぅうゔッッツ……ッ! …あ、…ぁ……ッひぅ……っ、…」
ぷちゅ、と音を立てて肉棒を引き抜かれた穴から、泡立った精液が尻を伝って垂れていく
白濁液がシーツに染みを広げていった
「……ッハァ、… ユイ、まじで良かった…… 今まで何人の男喰ったらそーなんの?w」
…何人、なんだろ……
不意にきた質問に頭を悩ませるも、分からないほど誰かと身体を重ね合わせてきた自分に嫌悪感が込み上げてくる。
「…でも、おにーさんが1番良かった、よ」
空気のような声。
「ッフ、ほんとか、それ?ww
まぁ、でも良かったから、また連絡してよ。ユイ、可愛いしエロいから 」
そう言ってサイドテーブルにお金と電話番号が書かれた紙を置く。
「…じゃあ、俺そろそろ行くわ」
相手はいつの間に着替えたのか、もう部屋を出ようとしていた。
「…ぁッ…、まって…、………ハグ、してほしい…」
「フハッ、……なに?最後になって甘えにきてんの? やり手だなーw」
相手は少し驚いた顔になり、でも優しく俺の体を包み込んでくれた。
「帰らないとダメなのに、またシたくなっちゃうじゃんw」
そう言いながらも、腕は解かれてドアノブの方に伸びている。
熱を失った体が寒く感じる
「ホテル代置いてあるしゆっくりして大丈夫だから。 …じゃ、またね」
その声の主にまたね、とも行かないで、とも言わずに
ただドアが閉まるのを見ていた。
ガチャン
ドアが閉まると同時にホテルのベッドに倒れ込む
あの人には誰か待ってくれてる人がいるのかなぁ………
……良、 …い なぁ……
「…フハッ」
自分を嘲笑うかのような声が部屋に響く。
「いち、に、さん…… ……ヤッタ、いつもより多い」
なんか、自分に価値があると言われているようで、嬉しいな…
それに反して心は冷たいままで。
ふとベッドの脇に置かれた紙に目をやるが、手は伸ばさず眼を閉じていく
「…………ぉ、やす…み………」
肌寒さを感じながら、大きすぎるベッドに身を預け、深く沈んでいった。
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