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第2話 カレ。
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ピピピッ ピピピッ
「……ぅ、う~ん………」
何度目かのアラームで目を覚ます
「……ん、……いま、なんじぃ………」
寝ぼけ眼を擦りながらスマホを見て、目を見開く。
「…、ん?……えっ、…も、こんな時間っ!? や、ヤバいっ…………」
今日は9時からバイトだと言うのに、起きる予定だった8時なんてとうに過ぎてしまっていた。
とりあえず急いで衣服を纏い、部屋を出る。
連絡先が書かれた紙は結局捨てていった。
「……、誰もいない、よな………」
知り合いがいないことを確認してからホテルを出る。
歓楽街で、しかもこんな格好をしているのに遭ってしまうと説明がつかない
「……よし、」
安堵の息を吐いてから、足早にその場を立ち去った。
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「…っは、…っは…」
走りながらバイト先へ向かう
結局、家に帰ってからお風呂に入ったり服を着替えたりしてたらこんな時間になってしまった。バイトにだけは遅れたくない、その思いを胸にさらにピッチを上げる。
「っ、………ハアッ……、な、…とか間に合ったぁ………」
ロッカールームに滑り込み、肩を上げ下げしながら息を整えていると、
「……ゆーーひさんっ!おはよーっ」
「うっ……!」
ドスと俺よりもでかい図体が乗ってきて、体のバランスが崩れそうになる
が、しっかりと俺の腰に腕が巻かれていて。
「…お、おはよ……」
「フフッ………ん?……ゆーひさん朝シャンしてきた?シャンプーの匂いがする」
ドクッ
「っ、……………ぇと、……………昨日、ゲーム、してたら寝落ちしちゃって……ヘヘッ」
バクバクと煩い心臓を押さえ込み、新にフニャリと顔を向ける
「フハッ…ゆーひさんらしくてかわいーけど、あんま夜更ししちゃだめだよ」
「………っん、」
「………ハア、お前ら…朝っぱらからキスとか見せつけんなよ………」
「…ッ!?」
な、えっ!? せんぱいっ……!?
いつの間にか佐山先輩が隣にいた
先輩にさっきのやり取りを見られたという事実にどんどん顔が赤くなる
でも、新は平然としていて、それどころか
「……チッ、佐山さん…あんたは空気ってものが読めないんすか…ハア
………最悪、ゆーひさんの顔見られた……ム」
先輩に突っかかる始末…
……よく聞いたら、凄いこと言ってる…
「おうおう、ちょいとおイタが過ぎるんじゃねえか?発情ガキめ」
「はあ? 違いますぅーゆーひさんが可愛すぎるだけなんですぅー」
な、か、かわっ!?///
「………ハア、お前ら…マジでバカップルだな……」
佐山先輩が呆れたようにぼやく。
そう、俺、周結陽と久世新は2週間前に付き合ったばかりだ
新に告られ、まさかの両思いだったことが判明し、付き合うことになった。
もちろん、新はアノコトは知らない
そして、エッチもまだしてない
「……あと、結陽。お前はデコチューだけでエロい声だしすぎ」
「なっ!? 最低!佐山さん、声まで聞きやがって!」
「ヘッ、聞かれたくなきゃこんなとこでいちゃつくなよな!」
2人の会話が進んで行く中、俺の脳だけが追いつけない状態で、佐山先輩の言葉にパニックを起こす
え、……俺、そんなに、え、エロい…声出て……た………?
変じゃなかった、よな……?
不安になって、新の顔を見上げる
「っ………ンン"、……あー、えと……敏感な、のは別に悪いことじゃないし、……なんなら俺は嬉しいぐらいだけど…ゴニョ …と、とにかく!次からは俺も気をつけます…」
そうゆうゆーひさんを見るのは俺だけがいいし………
そう小さい声で付け足した新の顔は林檎のように赤く、特に変だと思っている様子も無かった。
…なんだか、新を見ていると俺まで恥ずかしくなってくる
「……お、俺も……なんか、……ごめん、」
ドモリながらもそう伝える
「い、いや……別に…」
「「・・・・・・・」」
「お前らー、早く来いーー!」
扉の向こう側から佐山先輩の叫ぶ声が聞こえる
「……フハッ、じゃあ、行きますか!」
新の笑顔が俺に向く
「…うん」
俺には眩しすぎる笑顔に、目を細めそう答えた。
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