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第20-1話●性急に壊されて

 嗚咽が収まり、涙が枯れた後。私は顔を上げて彼に首を伸ばす。  押し当てた唇の柔らかさに体が甘く痺れる。目は閉じない。先王陛下の顔と口づけを交わしていることを忘れぬよう、視界に入れ続ける。  私を抱くのが他の誰かであってはならぬ。  舌を絡め合い、小刻みに跳ねてしまう体にまぶたが降りたがる。しっかりと感じ入りたい体に逆らって彼を見つめ続けていると、大きく熱い手が寝間着の胸元へ差し込まれ、胸に触れてくる。 「……っ……は、ぁ……んむ……」  思わず息継ぎに唇を離して喘ぎを漏らすが、すぐに唇を求める彼に貪られてしまう。  自分を奪われる感覚に、私の体が大きく疼く。  早く築き上げてきた自分を粉々に壊したくて、私は体を押し付け、性急に交わりたいと暗に強請る。  彼はすぐに私の望みに気づき、寝間着の結び目を解いて床へ落とす。  無防備となった私の体に彼は容赦しない。近くの壁へ私に手をつけさせると、うなじを貪りながら浅く突き出た双丘に手を這わす。  ぬちゃり、と彼の指が私の後孔を濡らす。密かに軟膏を隠し持っていたらしい。最初から私を抱くつもりでここへ来たと思うと、それだけで頭の奥が悦びを覚えて高揚した。

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