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括り紮げる 36
シャンデリアやら豪華なソファ、分厚い絨毯(じゅうたん)の敷かれたエントランスを抜けて、エレベーターに珀英と一緒に乗る。
「緋音さん・・・?」
「・・・・」
あくまで無言のオレを見て珀英は軽く溜息をつくと、エレベーターが到着するのを待つ。取った部屋のある6階に着くと、オレは案内に従って廊下を歩いて部屋にカードキーを挿して扉を開けた。
部屋に入ってオレは着ていたコートを脱いで、適当に椅子にかける。
珀英もコートを脱いで、オレのコートと一緒にクローゼットを開けて丁寧にハンガーに掛けている。
その珀英をオレは後ろから腕を引っ張る。
「緋音さん?!」
ベットまで引きずってそのまま珀英をベットに倒すと、上から跨(またが)ってのしかかる。驚いている珀英に顔を近づけて、そっとキスをする。
触れるだけのキスだったのに、珀英はオレの口唇を割って舌を入れて、オレの舌を探り当てると強く吸い上げて搦(から)める。
そして大きな手で、オレの着ているセーターの下から手を這わせて腰から背中にかけて撫ぜあげる。
それ・・・好き・・・。
口唇を離すと、珀英が嬉しそうに微笑みながら、
「お腹空いてんじゃないんですか?」
「・・・空いてるよ」
「じゃあ何で?」
オレは体を起こして珀英の上に座る。セーターを脱いで床に脱ぎ捨てた。
「全然足りない。お前が食べたい。わかってんだろ?」
口唇を舐める。
珀英が興奮するように、がむしゃらにオレを求めるように。
誘う。
珀英はその漆黒の瞳に獣じみた光をにじませると、いきなり上体を起こして座り、オレの腰を頭を強く抱きしめた。
「オレも、緋音さんが食べたい」
そう言って、噛み付くようなキスをする。
舌が、口唇が、食いちぎられそうな勢いで、珀英に食べられる。
強く舌を吸われて、腰に痺(しび)れが走る。
「んんっっ・・・はくえぃ・・・」
「あかねさんっ・・・好きです・・・愛してる」
「うん・・ああっん」
口唇を舌を、少し離してはまた搦める。唾液が溢れて、飲み込んでもすぐに溢れて、口唇の端から顎を伝って落ちていく。
ああ・・・ダメだ。
全部持っていかれる・・・体も感覚も心も感情も、珀英に括(くく)られる。
紮(から)げあげられて。
支配されて。
蹂躙(じゅうりん)されて。
犯される。
・・・気持ちが・・・良い。
珀英の激しさに流されそうになる。
ダメだ・・・オレが主導権握らないと。
オレは、珀英の胸を押し返して、激しい口吻けから逃げると、顎を伝う唾液を指ですくって。
ぺろりと、舐めた。
履いたままのパンツの中で、珀英のが完全に勃ち上がっているのを知っている。
オレはわざと焦(じ)らすように、珀英の首に抱きついて。
「・・お前オレの犬だって・・・ちゃんとわかってんのか?」
耳元で熱い息を吐きながら囁く。
珀英がオレの背中をうなじを、そっと指を滑らせて、オレの気持ちいいところを刺激する。
思わず珀英の指に合わせて腰が動いて、少しずつ呼吸が荒くなる。
珀英の首に抱きついたままの、オレの耳を珀英がベロリと舐めて、耳の穴に珀英の舌が入ってくる。
濡れた音がダイレクトに脳髄に浸透してきて、勝手に腰が動いて珀英にねだってしまう。
耳からの刺激が熱を持って、じわじわと全身を蝕んでいく。
「わかってますよ・・・オレは一生、貴方の所有物(もの)で、貴方の犬ですよ」
珀英の低い声が響いて、腰を後ろの穴を刺激して、イキそうなくらい気持ちが良い。
珀英がオレのベルトを外して、スラックスのボタンとファスナーを下げて、下着の中に手を入れて、お尻をそっと揉んでくる。
オレはもっともっとと、ねだるように腰をうねらせて、口唇を舐めた。
「足りない」
「え・・?」
オレは珀英の首から顔を上げて、真正面から珀英の顔を見つめる。キスする寸前まで顔を近づけて、珀英の瞳を嘲笑(わら)いながら見つめた。
「一生じゃ足りない・・・永遠だろ?」
囁いた。
珀英が大きな瞳を更に見開いて、興奮したように大きく息を吐くと、オレの頭をそっと抱き寄せて、軽く口吻けをする。
「そうですね・・・オレは永遠に貴方の犬です」
「・・・この駄犬が」
「はい、すみません」
謝る珀英の口唇に、そっと口吻ける。
軽く触れるだけのキスを繰り返すと、珀英が我慢できなくなったようで、オレの頭をしっかり抱きしめて。
貪るように、舌を口唇を吸ってきて、何度も何度も噛み砕くように、飲み干すように、口吻ける。
吸われすぎて舌が痺れてくる。でも、それが気持ち良くてやめられない。
やめて欲しくない。
激しいキスをしながら、珀英が再びオレの背中や腰やお尻を撫ぜて嬲(なぶ)る。
舌を差し出して、口唇は付けずに、舌だけを擦り合わせて、キスをする。
珀英の熱い舌が気持ち良い。
「ほんと・・・駄犬・・・」
荒い呼吸を繰り返す。
珀英が嬉しそうに微笑む。
オレはその舌を軽く噛んだ。
珀英の全部を。
括り。
紮げる。
Fin
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