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第177話 いつかきっと、そんな日が来ることを

 激しすぎた情交でフラフラになりなりながらも、なんとか二人はシャワーを浴び、脱ぎ散らかした服を身に着けた。  それでもなんとなくチェックアウトはしたくなくて、浩貴と翔多は体を寄せ合ってソファへ座っていた。  翔多が小さな頭を浩貴の肩に乗せ、浩貴が翔多の柔らかな髪をゆっくりと撫でることを繰り返す。  すると、不意に翔多が口を開いた。 「あのさ、前から思ってたんだけどさ、浩貴、どんどん大人っぽくなって、かっこよくなっていくね」 「そ、そうか?」  真顔でそんなことを言われたら、かなり照れくさい……うれしいけど。 「そうだよ。なんか浩貴ばっか先歩いて行っちゃうみたいで、オレ寂しいじゃん」  翔多は今度はすねたような表情になり、浩貴の腕にしがみついてきた。 「オレを置いてっちゃ嫌だよー、浩貴ー」 「バカ、なに言ってんだよ」  やさしく笑ってみせながらも、浩貴の本音は違うところにあった。  オレはもっと大人になりたい。……翔多を守れるような強さを持った大人の男に。  これからも、谷川や今里のようなやつらは現れるだろう。翔多は魅力的だから。  おまえをもう絶対に危険な目に遭わせたくないんだ。  翔多は、守られるばかりじゃ嫌だって言うだろうけど、オレはおまえを守りたい、翔多……。 「浩貴、なに考えてるの?」 「……翔多のこと」 「……う」  翔多は真っ赤になりながら、言葉を紡いだ。 「やっぱり浩貴、よりいっそうかっこよくなった。もともとかっこいい浩貴がもっとかっこよくなっちゃって、もうかっこよくなりすぎー」 「なに早口言葉みたいなこと言ってるんだ? 舌噛むぞ」 「あ、ほら、そういう表情がなんかとってもかっこよくて、大人の男って感じなんだよ、浩貴ってばー」  二人きりの部屋で、浩貴と翔多は束の間じゃれ合った。  明日は学校である。  二人はホテルを出ると、今はまだ別々の場所へと帰らなければならない。  でもいつかきっと、浩貴と翔多は同じ場所へと帰る日々がやって来る。  仲良く肩を並べて、幸せをいっぱい胸に抱えて……。  そう、それは、そんな遠くはない未来――――。

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