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第4話
男によってベッドまで強制的に連れられると、力強くベッドに押し付けられた。男は俺の上に跨がる。
ま、待て。これって…この体勢って、いわゆる…『押し倒されている』、ってことだよな?
「え、あの…」
ひたすら視線で、早く退けろと訴えかける。しかしそんな俺の願いは届かず、男は俺にキスをしてきた。
「んっ…、はぁ…!?」
俺はあまりもの出来事に驚き、男の肩を両手で掴んで押しのけようとする。だが、男はビクリともせず唇を押し当ててくるのだ。
お、俺の…ファーストキス…、こんなヤツに貰われてしまうなんて…それも、あっさりと。
そして男は、ついに舌を入れてこようとしてきた。
「まっ、待て待て!一旦、退けろ!」
一線を越えてはならない。ただその想いで、力任せに男を退かす。男は驚いた顔をしながら、まじまじと俺を見つめた。
「何で、したくないの?」
男はきょとんとした顔で見つめてくる。その顔が妙にいやらしい。俺は恥じらいを殺して、言った。
「…ファ、ファーストキス…だったんだよ」
言った直後、俺の頭は沸騰しそうになっていた。たとえファーストキスだったとして、この男に言って何の意味がある?俺は慌てて言い直した。
「まっ、お前程度の男なら、こんな俺のファーストキスとか考えられないだろうがな!」
「…嬉しい。」
「は…?」
男の思わぬ発言に、聞き返してしまう。
「僕に初めてをくれたことが、嬉しいんだ」
男は幸せそうに笑う。…俺のファーストキスを貰ったくらいで、こんなにも喜ぶ男がこの世にいるとは…。
俺は何か気恥ずかしくて、男から視線を外した。
「あの~、アンタ…かなり特殊だな」
「どういうこと?」
男は何も分かっていないのか、優しい瞳で聞き返してくる。
「というか、彼氏相手にアンタはやめてよ。誠司 、誠司って呼んで」
誠司…どこかで聞いたような気がするのだが、どうしても思い出せない。俺は名前にばかり気を取られ、適当に相槌を打った。
「ねぇ、悠太郎。本当に可愛い♡」
「…あの、さ。ええっと…誠司…君?」
「誠司で良いよ」
「じゃあ、誠司。…何で俺とヤる気なんだ?」
誠司はニコニコしながら、真面目に答える。
「それだけ、悠太郎が魅惑的だから!」
その回答に、力が抜ける。じゃあ彼女居ない歴=30の肩書きは何なんだよ!くそっ、コイツ、童貞をからかいやがって…!
「意味分からねぇ…」
「もう、悠太郎が本気になれば、世界中の人達はヤる気になれるよ?」
「もっと理解できん!」
誠司はふつふつと笑う。…本当に、この男と話していると気が狂う。
「昨日のことを覚えていないから、そういう事を言えるんだよね…?」
「は?昨日?」
誠司は何かに躊躇しながら、丁寧に言った。
「バーの中で、あの客達の悠太郎への目線…あれは、…獣だった。だから僕が引き取った。」
誠司は大切な物を見つめる時の目で、優しく言った。
「僕だから悠太郎もこんな対応ができてるけど、もしも太ったオジサンだったら、もっと嫌でしょ?」
誠司は儚げに言う。…いや、確かにそれも嫌だが、その前にバーでの出来事が気になりすぎて止まない。俺、マジで何をしたんだ…?
「あの…俺、バーで何をしたんだ?」
誠司は口元に手を当てて、言うか言うまいか考えいた。だが決心すると、一部始終を話してくれた。
「悠太郎、バーでさ、『相手が男でも良いからとにかく付き合いたい』って言い出してね。それで周りの飢えていた男が次々に反応して…。」
俺も誠司も口ごもる。次を聞くのがひたすら怖い。
「僕のバーは、まぁいわゆる…ハッテン場なんだよね。だから男達が悠太郎の泥酔したテンションに便乗して、悠太郎を犯そうとした。」
俺は唾を飲み込む。いや待て。どうやったらそういう雰囲気になるんだよ!?しかも、バーがハッテン場だっただなんて…前から調べておくんだったのに…。
「――――とにかく、この話をしたら悠太郎にとって気持ち良くないでしょ?早くヤろう。僕のテクニック、最高だから!」
そう言いながら、誠司は服を脱ぐ。俺はそれを横目で見ながら、先ほど誠司が言っていた出来事について頭を巡らせていた。
ヤバい、思い出せない。俺、何を言ったんだ?何をしたんだ?どうして、俺は…。
「ほら、悠太郎も脱いで?」
考え事をしていると、急に誠司が俺の服をまくりあげた。
「うわぁっ、ちょっと、待…!」
その時、誠司が裸であることに驚いて硬直する。質の良い白色の肌、綺麗な形の筋肉。まるで、本の中の王子様、そのものだった。
俺は彼の体に気を取られているうちに、彼は俺の服を順調に脱がす。やがて残りがパンツのみとなった時に、俺はようやく我に返った。
「まっ、待て!そこだけは!」
俺はそんな願いはこの男には届かないだろうと思っていたが、さすがにパンツを脱ぐか脱がないかとなると、誠司は手を止めたようだった。
「確かに。急ぐ必要はないよね。」
誠司はニコニコと笑う。そして俺の脚と脚の間に体を挟むと、俺にキスをしてきた。
「んぐっ…」
俺の脚が上向きに上がる。俺の股間に、誠司のアレがくっついている。俺は恥ずかしすぎて、軽くパニックに陥っていた。
誠司はゆっくりゆっくり俺とキスをすると、俺の大切な所々の一つに手をかけたのだった。
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