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第3話
「へ?セッ…セックス?俺と?お前が?」
俺がおどろおどろしく聞くと、男は楽しそうな笑みを浮かべながら頷いた。
「うん。」
俺は頭を抱え込む。…全く、何やってんだよ、俺は!?いくら性経験がないからとはいえ、男に走ってしまうなんて…!
第一、どうしてこんなヤツと恋人になったんだ!?意味わかんねぇ!
――っは!待てよ、そういえば、3日間だけとか言ってなかった?もしそれが契約なら、すぐに断ち切れば問題ないのでは?
「あの、…3日間の恋人って、終わりにしません?」
「無理ですよ。その契約を終わらせることは不可能です。」
「どうして!?」
「このサービス、延長は可能ですが中止はできない仕様なので。」
その言葉に、肩の力が抜ける。…俺からすれば、ほとんど初対面の男と、人生初の体が結ばれた仲だと突然言い聞かされたようなものだ。冗談じゃない。
それに、俺らは男同士。これがサービスとか何であれ、どうして男同士で恋人の真似なんかできるんだ?それもこんなイケメンが、どうしてアラサーの俺なんかと?
「…まぁ、今日のところは帰ったらどうだ?」
「えぇ~、まだ一日目ですよ?もっと悠太郎とキスとかしたいー!!」
駄々をこねるように体をひねらせる男を見てぎょっとする。俺は後ずさろうと足を後方に回すと、男がいきなりその場で立ち上がった。
「っ!な、何だ!?」
いきなりの出来事だったため、思わず硬直してしまう。男の瞳に俺が映っているのが分かるほどの近さだ。
不本意ながら、男の長いまつげが美しいと思ってしまう。整った鼻筋や輪郭も、爽やかな黒髪も、淡い紅色の唇も…。
その全てが秀でており、誰もがイケメンと認めてもおかしくない男だ。
「あ、あのー?」
俺が男の機嫌を伺いながら問いただす。というかコイツ、背も高いな。いやぁ、何か痩せているっぽいし、イケメンだし、背も高いって…さぞかし女性にモテるんだろうなぁ。
「ねぇ、今からやろう?たまってるんじゃないの?」
そう言って男は、俺の腰に手を回した。俺は目を見開く。
「へ…?」
口から出た間抜けな言葉に、俺が驚いた。男は愛おしそうに笑うと、俺の耳元にキスをした。
「~~っ、!」
かあっ、と耳が熱くなるのが伝わる。これは演技、これは演技、と自分に言い聞かせる。どうしてこんなにも恥ずかしくなるのだろ。男はきっと、恋人の振りをしているだけなのに。
「もう、耳にキスしただけで可愛いとか…」
男は楽しそうにくつくつと笑いながら、俺の額に唇を当てた。
…何も考えられない。今、何が起こった?いや、まさかな。まさかイケメンが俺の耳と額にキスをするとか、な。有り得ないし。
その俺の考えは裏腹に、男は更なる高みへと挑戦しようとする。
「悠太郎のベッドに行こうよ。僕、もう我慢できない。」
俺の太ももに、何か硬いものが当たっているのが分かった。俺はおそるおそる太ももを見てみる。すると、ズボンいっぱいになった男のアレが俺の太ももに密着していた。
「え、あ、あの…」
俺は状況が整理できていないまま、男に強引に手を引っ張られながら、ベッドへ向かった。…俺を、見て、興奮した…のか?
男は一瞬振り返ると、俺を見て幸せそうに笑ったような気がした。
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