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LIVEの日(1)
ついにこの日が来た…
僕が、TALKING DOLLに入って…
初めてのLIVEの日だ…
僕は…そりゃあ緊張しながら、箱入りした。
「おはようございます〜」
「おはようございます、あれ?何で今日いるの?」
そのライブハウスには、
実は過去にも出た事が何度かあった。
僕の顔を見知っていたスタッフが、僕に訊いてきた。
「あー実は… 僕、TALKING DOLLに入ったんです…」
「へええーそうなんだ!」
「なので…よろしくお願いします〜」
「こちらこそ、楽しみにしてるよ、よろしくね」
そして僕は…重いドアを開けて会場に入った。
既に、他のバンドのメンバーが、セッティングをしていた。
カイとシルクが先に来ていた。
「お、カオルーおはよう」
「おはようございますー」
「調子はどうよ」
「うーん…緊張してます〜」
僕は、彼らの隣に座った。
カイは、バスドラムのペダルを組み立てていた。
「おはよーございまーす」
元気なサエゾウもやってきた。
前のバンドのリハーサルが着々と進む中…
他の3人は、機材の準備をしたり、
セッティング表を書いたりしていた。
僕は特に何も準備することもなく…
タイムテーブル表を、ずっと見ていた。
今日の出演は4バンド。
どこも、どちらかというとV系寄りのバンドばかりが集まったイベントだった。
僕らの出番は3番め…
てことは、今リハーサル中のバンドが最後か。
なるほど…カッコいいサウンドだった。
見た目も…たぶん今は割と普通の人ぼいけど、
本番になったらコテコテに変身するんだろうなー
以前いたバンドでも、
ここの、このイベントに参加した事があった。
そのときは僕らは1番めで…
お客さんも、知り合いしか集められなかったけれど…
他のバンドには、ちゃんとファンがついていて、
みんな凄いんだなーと、思ったものだ…
TALKING DOLLには、既にファンがついている。
そんなバンドに入れた事を、改めて嬉しく思った。
そしてまた…緊張してきた。
僕は煙草に火を付けた。
もー何本目だ…
「じゃあ本番…よろしくお願いします」
そうこうしているうちに、
前のバンドのリハーサルが終わってしまった。
「じゃあ次… TALKING DOLLさん、お願いします」
「はーい」
「お疲れー」
サエゾウが、前のバンドのギタリストに声をかけた。
「おー」
「いいね、このギター。また買ったの?」
「うーん…買っちゃいましたわ」
2人は知り合いらしい。
「新しいボーカル入ったんでしょ」
「そーなんよー」
「楽しみにしてるね」
「もーメッチャ期待してて!」
あーサエさん、またそゆこと言わんでいいから…
機材のセッティングを終え…
それぞれのサウンドチェックのあと…
「じゃあ、曲でお願いします」
と、PAさんから声がかかった。
「1曲め…途中までやりまーす」
カイが言った。
そして、演奏が始まった。
僕は、集中した。
ここで変な気を起こしてはいけない…
それぞれの音が、ちゃんと聞こえるか、
僕の歌はどうか
モニターから、誰の音を返してもらえばいいか…
僕はそんな事ばかりを必死で考えながら歌った。
曲が止まって、
それぞれがモニターの希望を申し出た。
「歌もっとください」
「あ、ここにも」
「俺んとこにもー」
なんでみんなそんな歌聞きたいのー
「ボーカルさんはどうですか?」
「…僕は、全体の混ざった音がもっと欲しいかな…」
「え?」
「そんなこと…できます?」
PAさんは、ちょっと考えて…
「…じゃあ、それぞれ少しずつ上げて、ボーカルさんの所に返してみますね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、3曲め…やってみよう」
カイが言った。
そしてカウントから、曲が始まった。
おおおー
モニターからもよく聞こえるようになった。
後ろからの、生のドラムとアンプからの音に加えて
モニターからも、それぞれの音が来て…
前からも後ろからも、
音に身体が包まれる感じになった。
曲が止まって、僕はPAさんに言った。
「すーっごく良い感じです!ありがとうございます」
PAさんは、してやったりな表情で、ニコッと笑った。
それからもう2曲ほど、途中までやって
僕らのリハーサルは終了した。
「本番、よろしくお願いします」
挨拶をして、僕らは撤収し、
次の…2番めに出るバンドと交代した。
機材を片付けながら…サエゾウが言った。
「なんか、カオル、全然調子悪くない?」
「…そうですか…」
「何か、力半分って感じだった…」
「…」
「違うよ、サエ…分かってないなー」
シルクが横から言った。
「リハから勃っちゃったら困るでしょ」
「あーなるほどね。そーいうこと…」
納得しないでください…
まあ…仰る通りなんですけどね…
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