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初めての営業

「あっ…すいませんっ…」 ショウヤは慌てて、僕のモノから身体を離した。 そして、若干余韻に震える手で、 急いで僕の身体を拭き、衣服を整えるのを手伝った。 「カオル、どう…落ち着いた?」 「…あ、はい…」 「外、出れそう?」 「…はい」 「じゃあ、行こう、他のみんなも頑張ってるから」 「…わかりました…」 そう答えて、僕はゆっくり身体を起こした。 そして、ショウヤに支えられながら、立ち上がった。 「ショウヤさん…ありがとうございました」 「えええっ…とんでもない、僕の方こそ…」 「じゃあ、行こうか…」 「…はい」 そして僕らは、楽屋を出た。 そして、さっきのドリンクカウンターへ向かった。 そこには、大勢の女子がいた。 その中にあの3人が、散らばって立ち… にこやかに話したり、写真を撮られたり、していた。 「お、カオルー!」 真っ先に僕を見つけたサエゾウが、 僕に手を振り手招いた。 「やっと復活したかー」 「…すいませんでした…」 僕は人混みをかきわけて、サエゾウの隣に行った。 彼は、そこら辺にいる女子たちに向かって言った。 「これ、カオルーよろしくね」 「…」 「ほら、ちゃんと挨拶しろよー」 サエゾウは、僕の頭をポンと撫でた。 「…あっ…よろしく…お願いします…」 僕はそう言いながら、皆に頭を下げた。 「えーなんか、歌ってるときとイメージ違うー」 「ギャップ萌え…」 「かわいいー」 「ホントにサエ様の玩具ぽいー」 「ヤバい…」 何がヤバいのか、よく分からないが… そこらの皆さまは、 それぞれ好き勝手に言いながらも、 僕を好意的に迎えてくれたようだった。 「サエ様と一緒に写真撮ってもいいですか?」 「いーよー」 そう言ってサエゾウは、僕の肩を抱き寄せた。 「こんな感じでいい?」 彼は僕の頭を抱き寄せ… 僕の頬にくちびるをあてた。 「…っ」 「ああ〜」 「尊い…」 彼女たちから、歓喜の嗚咽が漏れた。 カシャカシャッ… いくつものスマホが、僕らに向けられた。 「カオルーちょっと、こっち来れる?」 向こうから、カイの声がした。 「あ…はい…」 僕は、スマホを向けてくれてた彼女らに頭を下げて… 今度はカイの隣に移動した。 カイは、僕を…目の前の2人に紹介した。 「この子たちもバンドやってるんだ。結構前から、何度も来てくれる子たち…」 パッと見、背の高い女子かと思った。 派手な服装のその2人は、 高校生くらいの男子だった。 「俺ら、TALKING DOLLのサウンドが好きなんです…正直、ボーカル変わるって聞いて、ちょっと心配してました…」 そのうちの1人がそう言ったかと思うと… もう1人が、俄かにバっと、僕の手を両手で握った。 「すごかったです…カオルさん!」 そして僕の目を真っ直ぐに見つめて、 興奮気味に続けた。 「あんな風に歌えるなんて…俺ホントに尊敬します」 「…えええっ…」 彼の勢いに押されて、 僕は、若干…後ろへ下がってしまった。 「…あ、ありがとうございます…」 そんな僕を見て…その2人は、意外そうに言った。 「…割と普通の人なんですね…」 「ホント…歌ってるときとイメージ違う…」 「…すいません」 「こいつ、歌ってるとき…ホントにどっかイっちゃうんだよねー」 カイが口を挟んできた。 「それって凄いですよね!」 「うん…ホントに、歌ってるときの眼の色、全然違いましたー」 何を善しとしてくれているかはともかくとして… この方々にも、好意的に迎えて頂けたようだった。 「とても素敵でしたー」 「また来ます!」 横からまた違う声をかけられた。 楽屋に入る前から来ていた子たちだった。 「あっ…ありがとうございました…」 僕は彼女たちに頭を下げた。 「お、ありがとうね、気を付けて帰ってねー」 カイは、大きく手を振って、彼女たちを見送った。 「カオル、一緒に写真撮りたいって…」 今度はシルクが僕を呼んだ。 「あ、はい…じゃ、すいません、そんなに褒めてくれて嬉しかった…ありがとうございました」 高校生男子2人にもお礼を言って… 僕はシルクの隣に行った。 そこにも、ガチっぽいバンギャル風女子が… 数人群がっていた。 「カオルさん?…雰囲気あるよねー」 「メッチャ写真撮りましたー」 見た目ほど怖くは無さそうな彼女たちも、 好意的に接してくれた。 「一緒に写真…いいですか?」 「あ…はい、もちろんですー」 僕は彼女たちに囲まれて、何枚も写真を撮られた。 「シルクとツーショットも撮っていい?」 「いいよ、オッケー」 そう言うとシルクは、僕の腕を掴んだ。 「どんなのがいい?」 「ダメじゃなかったら、チューして欲しい…」 えええー 「わかった」 えええええーーっ シルクは…これっぽっちの恥ずかし気も無さそうに、 僕の顎をくいっと掴むと… そのまま顔を近付けてきた… そして、もうちょっとでくちびるが触れる… って所で、寸止めした。 カシャカシャッ… また、いくつものスマホが、僕らに向けられた。 カシャカシャッ…… なんか、あっちの方からも聞こえた。 「目、瞑って…カオル」 「…」 僕は…いたしかたなく、言われた通りに目を閉じた。 と、シルクは… 寸止めしていたくちびるを… 僕のくちびるにそっと付けた。 「おおお〜」 「あー良いですね〜」 カシャカシャッ…… また、歓喜の嗚咽とともに… スマホのシャッター音が連打した。 カシャッ… ん? なんかメッチャ聞き覚えのある音も鳴った。 「あーショウヤ、何ドサクサに紛れて撮ってんの?」 サエゾウの声がした。 やっぱりか…

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