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TOPOP3【トッポサイド】
由希仁のこれからの衣服を一通り買った後、僕と由希仁はフードコートに来た。
アーセナルはコーヒー豆、ジョニーはお酒を買いに離れた。
で、僕らは今何をしているかというと。
「トッポ、クレープってこんなにおいしいんやね」
由希仁は口の回りにチョコをつけながら食べている……そう、僕らはクレープを食べているんだ。
僕のは大好きなイチゴとバナナにチョコがかかったもの。
由希仁はチョコブラウニーが入ったものや。
ああ、めっちゃ美味しい。
幸せや。
「あっ、また天国に行ったみたいな顔してる~」
いつの間にか僕の顔を覗きこんでいたみたいで、気づいたら目の前に由希仁の顔が。
キス、される。
僕はドキッとしながらも、なんでもないようなフリをして顔を逸らす。
「なんでもないから、ゆっくり食べぇな」
僕は俯く。
「はい!」
物陰を感じて目で横を見ると、グレープをふりふりされた。
僕は恐る恐るパクッとかじりつく。
ブラウニーが柔らかくて、少しほろ苦い。
大人の味がした。
「おいしい?」
食べ合いっこなんて、初めてした。
由希仁にまた、初めてを奪われた。
なら、これからは由希仁の初めてをもらおう。
ひとつでいいから。
「めっちゃおいしいよ……じゃ、僕の食べ?」
今度は僕のクレープを由希仁に向けた。
あ~んと口を開けている姿はとても愛おしい。
由希仁を食べたいよ。
「ホンマや!! あのクレープ屋さん、あたりやな」
由希仁はえくぼを浮き出して笑った。
昔の笑顔そのままやな。
ほんま、かわええ。
「僕らは表立ったことはあまりできひん。けど、けどな? 生きてるだけですごいことやからな」
病気しても、裏家業でも。
生きていれば、どうにかなる。
由希仁なら。
由希仁とならな。
僕は珍しく自信満々に言ったのに、きょとんとしている由希仁。
やっぱり、あかんかったんかな。
「ごめ「そうやね」……?」
由希仁が珍しく照れている。
「いあの、ありがとう。めっちゃ嬉しい。この10年ぐらい苦しかったけどさ……生きてたから、また会えたんやもんな」
由希仁ははにかんでくれた。
僕はなんか嬉しくて、ソフィーの頬をツンツンした。
初めて、由希仁にいじわるをした。
「カチ~ン、くすぐったいやんか~」
悲鳴を上げながらも、由希仁は僕の頬をツンツンし始めた。
こんな時間がずっと続くとええな。
素朴で柔らかい一時でええから。
それだけでええよ、神様。
他に何もいらんからさ。
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