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第1話
ぷかぁ、と口から煙を漂わせる。
ふらふらとたなびいた煙はすぐに高性能の空気清浄機に吸い込まれた。福利厚生だとか言って、こんなところに金をかけるくらいなら、もっと残業代を上げてくれればいいのにと、廊下の隅の喫煙室で一人ぼやいてみた。
腕時計で時間を確認するとすでに午後九時になろうとしている。今夜は絶対に日付を越える前には帰りたい。短くなった煙草の残りをひと吸いしてスタンド灰皿に放り投げると、新しい煙草を指先でつまみだした。
唇で軽く咥えて火を点けようとした時、節電対策のために照明の落とされた暗い廊下の向こうから誰かが近づいてくる足音が聞こえて、ガチャリとドアが開けられると一人の男が入ってきた。
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