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第21話
肉? と聞き返す彼の声が有り得ない近さで響いて、耳朶にかかった吐息にぞくりと震えた。俺が思わず背凭れから背中を離そうとすると、なんと彼は左肩に顎を乗せてそれを阻止する。頬が触れそうなほどの顔の近さにドキドキしながら、
「……肉、食ったら代謝が上がって体が熱を発するんだそうです。そうでなくても水無月さんはあんまり飯を食わないでしょう? 実は栄養足りてないんじゃないですか? というか、邪魔になるんで離れてくださいよ。もしくは、お気にいりのホット甘酒でも飲んで温まったらどうですか?」
「甘酒か。買いに行きたいけれど、今、廊下に出たら確実に凍死する」
俺は溜め息混じりに隣の椅子にかけていた自分のスーツの上着を取ると、
「ほら、これも着ていってもいいですから」
急に彼の瞳が輝いてコートの上から俺の上着を羽織りだす。そして、ふふっと笑うと、
「優しいなあ。木崎君は、いつもこうやって女の子に気を使うんだ」
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