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第71話

 いまだに笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭っている水無月に呆れて言った。すると、 「そんな風に僕の事を思ってた? 露出狂なんかじゃ無いよ。でも、さっき見られていたかもしれないって言うのは本当?」  俺は一つ頷くと、 「こっちを見上げて何回か青信号も飛ばしていたみたいだしな。信号機の柱の影に隠れて居たから顔ははっきりとは分からなかったけれど、男だった」  それを聞くと水無月は急に神妙な顔になった。俺は先ほどからくるくる変わる水無月の態度についていけなくて少し戸惑ってしまう。だが、いつまでもこうしていても仕方がない。椅子に置いていた鞄を持つと、 「……じゃあ、もう俺は行くから」

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