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第73話

「本当にごめん。もうそろそろ機嫌直してくれないかな……」  目に見えて肩を落とした水無月がテーブルの上で湯気の立つ湯飲みを前にして、俺の顔色を窺う。俺は憮然とした表情で店員が継ぎ足してくれた熱い茶を啜った。  昼食に入ったいつもの定食屋の一角。区切られた四人掛けのテーブルに水無月と二人、向かい合っての食事が終わったところだ。  目の前の水無月は叱られた子犬のようだ。  朝、彼がオフィスに来てから俺達はギクシャクしていて、他のメンバーもその雰囲気を察したのか今日は容易に声をかけてこない。 「もう君にあんなことは頼まないから……」

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