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第86話
「佐竹と水無月は学生の頃からの友人で、恭介、馨って互いを呼び合う仲だったんだ。ところが五年前のある日、いきなり水無月がうちを退職したんだよ」
「それは二人の間に何かあったからですか?」
大杉さんは渋い表情で煙草を一本吸いきった。そして、これは他言無用な、と呟くと、
「実は佐竹と水無月は付き合っていたんだ」
「付き合う? それは恋人と言う意味の?」
うん、と頷いた大杉さんに、
「いや、でもそれはおかしいですよ。だって佐竹さんは結婚しているし、五才になる可愛い娘さんも……」
そこまで言って俺はハッと口をつぐんだ。もしかして、もしかすると?
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