85 / 140
第85話
「今、一緒に仕事してるんですよ。水無月さんは客先の人で、今月一杯はここにいるんです。実は……」
俺は昼間の定食屋での二人の様子を大杉さんに伝えた。いくぶん落ち着いた大杉さんが鼻から盛大に煙を噴き出してガリガリと後頭部を掻くと、
「それで午後から佐竹の機嫌が悪かったのか。俺はてっきり、あいつの嫁さんが、」
そこまで言って、あ、と大杉さんが口を閉じた。だが、俺の鋭い視線に、
「……実は今、佐竹の奴、浮気がバレて嫁さんと別居しているんだ」
それはそれで驚いたが今はそんな事を聞きたい訳じゃない。その俺の雰囲気に気がついて大杉さんが軌道修正してきた。
ともだちにシェアしよう!