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第115話

 あまりの酷さに頭がクラクラする。こんな奴を先輩と慕っていた自分が情けなくなった。 「あれで僕はもうだめだと思ったんだ。だから恭介の前から逃げだしたんだっ」  ハアハアと肩で息をする水無月を前にして佐竹は何を思っているのだろう。少しは彼の叫びの意味を読み取れたのだろうか?  ところがどうにもこの男は、他人の気持ちには超絶に鈍感だったようだ。 「もういい。どうやら言っても解らないみたいだしな。お前はまだ俺が好きなんだろ? なら、俺がお前を満足させてやるよ。あんな風に毎朝ここから俺を誘っていたんだ。これからは木崎じゃなくて、俺が可愛がってやる」  ガタンッと何かが倒れる音。水無月が抵抗する声が部屋に響いて、俺はやっとここから飛び出すタイミングを得た。そして、「木崎君っ!」と鋭く名前を呼ばれて、俺は目の前のドアを盛大に蹴りあげた。

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