122 / 140

第122話

「木崎君、実は僕らはあの喫煙室で会ったのが初めてじゃないんだ。ほら、前に一度、君が僕の会社を訪ねてきてくれたことがあっただろう? あの時は会えなかったけれど、偶然に帰り際の君の姿を見たんだよ」  以前、急に体調を崩したリーダーに変わって俺が打ち合わせに訪ねた時か。 「君は電話の声で想像した通りに実直で凛々しくてスーツ姿も決まってて……。あの時、僕は君が一目で……、好きになった……」 水無月が急に耳まで真っ赤にして俯いた。 「それで今回、ここに来ることになって僕は君に会えるってすっかり舞い上がって、そして不安になって……。君に会う前に、ここで通っていたゲイバーのマスターや仲間に会いに行ったんだ。皆、昔から色々と僕の悩みを聞いてくれた人達だったから」

ともだちにシェアしよう!