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「おかえり少年! ……あれ、今日は元気がないね」 「うっせぇな…お前に構ってる暇ねぇんだよ」 帰り道、いないなと思ったら少し離れた場所のガードレールに座っていた。 俺を見つけて走り寄ってくるのを、シッシッと手で追い払う。 「ううん、今日はいつもに増して冷たいなぁ」 「どうとでも言ってろ、ったく……」 どうせ何もしてこないし、もうなんでも言い放題。 今俺はこのおっさんに構ってる余裕はない。 (生田への返事、どうすっかなぁ) まだちゃんと答えが出ていない。 なるべく早めに返してやりたいのに、中々心がまとまらない。 「俺男は無理だから」って答えるのは、絶対失礼なんだよな。 性別を超えて告白してくれた奴に、その回答は駄目だ。断るならもっとちゃんとした理由じゃないといけないと思う。 ってか、そもそも俺は告白を断りたいのか? 確かに男とは付き合ったことないけど、でも生田と付き合うのは想像できる? いや無理?? んんー、イマジネーションを膨らませて考えてみて……… 「何かにお悩みのようだね」 「うわっ!」 突如視界に入ってくる、猫っ毛の金髪。 「どうやら人に言いにくい悩みを抱えているように見える。 よし!このおじさんがとっておきの場所へ連れて行ってあげよう、おいで〜」 「え、ちょっ!」 これまで絶対俺に触ってこなかったのに、突然腕を引っ張られビクついた。 「大丈夫大丈夫、誘拐なんてしないから。ちゃんと暗くなる前には家に返すよ。 だから、ね?」 「いや、待ってまじでこういうのは勘弁…… って、おいおっさん!?」 離そうと腕をブンブン振ってる間に「タクシ〜!」と手を上げられ、目の前に止まる。 「さ、行こうか。君もよく知ってるそんなに遠くない場所だから。私を信じて」 (いや、信じてもなにもねぇよ) 心の中で反論するも、優しく笑う目に押し黙るしかなくなり、やむを得ず開いたドアの先に乗り込んだ。

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