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(今日は給料日だぜ!)
時々入ってるバイトの給料日。
ちょっとテンションが上がって、足取り軽く銀行へ向かう。
今日は予定があるからさっさとATM寄らなきゃ。
それで金下ろしたら、予約してたもの取りに行って……
(…最近、おっさん見なくなったなぁ)
あの日無理やり一緒に出かけてから、パタリと姿を見なくなった。
多分1週間くらいが経とうとしている。
ようやく平凡に戻って安心したけど、なんか不思議な感じで…いや寂しいとかではないけど……
(結局、訳も分からんまま消えてったしなぁ)
後味悪いけど、まぁいいや。
狐に摘まれたというか、多分まじで七不思議かなんかだったんだろう。
深く考えるだけ無駄無駄。
着いた銀行の自動ドアを抜けて、真っ直ぐ目的の場所に向かう。
ATMは少し混んでて、人が並んでtーー
「強盗だ!!全員動くな!!」
「…………は?」
思わず声のする方を見ると、武装した奴らが数人、拳銃片手に大声を上げていた。
「おい、言うこと聞けねぇのか!
動くなっつってんだろうが!!」
1人が天井に向かって発砲し、あたりは一気に静寂に包まれる。
(ぇ、嘘…だろ……?)
ドラマかなんかの撮影?
待って、こんなこと現実に起きんのか……?
「そのまま全員座れ。
まだ動くんじゃねぇぞ。指示するまでその場から離れるな」
(起きてんじゃん)
おいおいどうするこれ。
頭真っ白すぎて全然働かねぇんだけど。
ってか、この後予定あんのにそんな都合よく起きる? 嘘だろ??
どうする、どうする……?
「……ん、…ーねん、少年っ」
ポンッ
「っ!?」
肩に手を置かれ勢いよく振り向くと、片手を振ってるふわふわした笑顔。
「な、おっさnーー」
「そこ!うるせぇぞ!!」
「っ、」
もがっとおっさんの手が口を塞ぎ、すいませんと強盗へ頭を下げてる。
そのままじっとしていると奴らが集まって話をし始め、そっと口の手が離れていった。
ヒソヒソ……
「お前なんでここにいんだよっ」
「やぁ、久しぶりだね少年」
「いや今挨拶してる場合じゃねぇから」
「うーん、毎度のごとくつれないなぁ」
「なっ、てか大体、お前今まで何処にーー」
「静かに」
ピトリと、あいつの人差し指が俺の口を封じる。
「今はその話は無しだ。時間がない。
先ずは私の話を聞いてもらおう」
さっきまでのふわふわはどこへ行ったのか、一気に真剣になった目に射抜かれグッと押し黙る。
そんな俺に優しく笑い、鋭い視線を奴らへ向けた。
「ここから髪をやや赤く染めた男が見えるだろう?
これから、その男が欠伸をする」
「え?」
見ていると、直ぐにクワァッと開く口。
「次に、あのリーダー格の男が左端の小柄な男へ〝廊下を見張れ〟と指示する」
「おいお前!ちょっと廊下見張ってろ。
小せぇんだからそれくらいしかできることねぇだろうが」
飛んだ指示に、小柄な男はぶつくさ言いながら廊下へ向かっていく。
(え、は?)
なんで…なんでおっさんはあいつらのこと分かってんだ?
何か通信機とかある? いや、通信機で指示は読めても欠伸までは読めない。
じゃあなんで? まさかグルとか……
「あ、グルではないよ、私は君の味方さ」
「っ、」
苦笑気味に告げられ、ゴクリと唾を飲み込む。
「けど、私はこの事件を知っている。
理解するのは難しいだろうけど、とりあえずは分かったかい?」
呆然としながら小さく頷くと、「いい子だね」と笑う声が聞こえた。
「それじゃあ、次へ行こう。
ーー真崎 壮太くん」
「は、はぃ」
「君は、ここで死ぬ」
「…………ぇ?」
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