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第24話 近くなる僕らの距離

あの矢野君の劇的な告白依頼、 僕たちの距離はグンと近くなった。 矢野君が僕に気を許しているのが傍から見ても分かる。 ましてや二人きりになると、 矢野君も僕にあまり遠慮をしなくなった。 まさかマッパで泳ぐ矢野君にお目にかかれるとは…… 僕は矢野君がプカプカと浮いている姿を横目で見やると、 スッとその場を立って少し移動した。 矢野君には気付かれてないと思ったのに、 直ぐに 「お前、何やてるんだ?」 と尋ねられガクッと来た。 僕は茂みの向こうに隠れて、 矢野君が裸で泳いでいる姿を盗み見して見たかった。 というのも理由があった。 「いや、ほら、何だか隠れて盗み見するって官能的じゃない? 時々さ、ロマンス本を読んでると こういったシチュエーションがあるんだよ~ 迷い込んだ森の湖でカッコいい男の人が裸で泳いでるのを見かけて 茂みの影からドキドキしながらそっと覗き見るとかさ~ その後は必ず見つかって恋に落ちるんだよ~ それがどんな感覚なのかな?って思っちゃってさ~」 僕が力説すると矢野君はまたいつもの調子で 「何また訳のわからない事を…… お前の哲学はほんと、屈折してるな」 と言いながらも口の端は笑っていた。 僕はへへへと笑いながら茂みの中から出てくると、 水辺に座って足を水に浸けた。 矢野君もプカプカと浮かびながら、 僕の近くへとやって来た。 「ねえ、せめてパンツ履かない? 結構…… いや、かなり、あられもない恰好なんだけど……」 うつ伏せならまだしも、 仰向きはマッパでは目のやり場がない。 「お前な~ そっくりそのまま台風の日のお前に言ってやりたいよ!」 矢野君がからかったようにしてそう言うと、 「え? 台風の日って何かあったっけ?」 と僕はおとぼけて見せた。 その後矢野君はニヤニヤとしながら湖から出てくると、 僕の隣に寝転んだ。 「ひゃ~ 濡れたまま寝転がると汚れちゃうよ?」 「良いよ。 また水に入ればいいし」 そう言って矢野君は涼しい顔をした。 横目で矢野君の裸体をチラ見したけどやっぱり立派だ。 今は大人しくデロ〜ンとしているアレでさえも様になっている。 全然そんな雰囲気ではないのに、 裸の矢野君を横にすると、 否応なしにドギマギする。 そんな僕の心情を知ってか、 矢野君がニヤニヤし出した。 “キーッ! 悔しい! 僕の方からは絶対襲わないぞ! 煩悩退散! 煩悩退散!” とブツブツと念仏の様に唱えながら 意識を変えようと矢野君に尋ねた。 「君の大叔母さんの一花さんだっけ? でも、よくこんな所見つけたよね?」 きっと僕の “意識をそらさなきゃ” っていう、そんな思いも矢野君には分かってしまったのだろう。 また口の端で笑みを浮かべると、 「彼女は小さい時はやんちゃだったみたいだったぞ。 花が凄く好きで、両親に付いて良くこの地に来てたみたいだけど、 ある日、花を求めて探索してる時にここを見つけたみたいだ」 と教えてくれた。 「そうだったんだ…… ここって色んな花が一杯だもんね~」 そう言って周りを見まわたした。 ここでは赤や黄色やピンク、 紫や白やブリーのいろんな色の花があちらこちらで見受けられる。 「彼女、花冠を作るのが好きだったみたいで 色んな花で花冠を作ってたって聞いたことがある。 花冠を作らせれば右に出るものは居ないみたいな…… でも俺が覚えてる限りでは作ってるのは見たことないんだけどな~」 「矢野君、大叔母さんの事大好きなんだね。 何だか凄くうれしそうに彼女のこと話すよね!」 そう言うと、彼は僕を見て微笑んだ。 「彼女は俺の特別だった……」 「うん、うん、分かる! 話聞いてるとそんな感じ!」 「彼女は凄くロマンチックな所もあって……」 「そうなの? どんなところが?」 「まあ、どんなところがって聞かれても、 一概には言えないんだけど、 もし彼女が今生きてたら、お前といい勝負だったかも?!」 「え~ そうなんだ! 僕も会ってみたかったな~」 「きっと、気が合ったと思うぞ」 「だと良いんだけど…… 矢野君の家族と通じ合えるって嬉しいよね。 ねえ、彼女の事、どんな事覚えてる?」 「う~ん、そうだな…… 顔はふんわりとした感じで、 年取ってても本当に花が似合うって感じの人だった。 話し方も柔らかかったし、 良く笑う人だったよ……」 「きっと矢野君に似て優しい人だったんだろうね」 そう言うと、矢野君は少し照れていた。 「彼女は俺に人を愛すると言う事を教えてくれた人なんだ。 まあ、俺は最初の恋愛でつまずいてしまったけどな」 と少し悲しそうな顔をした。 「そんなことないよ! あれは向こうがヤバい奴だったんだよ! 矢野君は大叔母さんが教えてくれたように、 ちゃんと彼を愛してたじゃない」 僕がそう言うと、矢野君は僕を見て微笑んだ。 「俺、お前に出会えてよかったよ。 お前がそう言ってくれるから俺は救われる……」 彼がそう言ってくれた途端、 おへその所から訳の分からない感情がふつふつと込み上げてきた。

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