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第一章・2
ビルの地下へ続く階段を下りながら、松下は了に新しい商品候補の履歴を説明した。
「氏名は、南海 遥(みなみ はるか)。第二性はΩで、年齢は自称20歳です。身長165㎝、体重52kg、健康状態は良好です」
「少し痩せてはいないか?」
「病的ではありません」
地下一階のドアを開け、フロアの一番奥へ進む。
了は、基本四階までなら階段を使う男だった。
ジムだけでなく、生活の中にも体を鍛える場を設ける。
そんな彼の肉体は引き締まり、ほどよい筋肉が付いていた。
やがて奥の事務所前へと到着し、松下は素早くそのドアを開け、了を通した。
中のスタッフたちが一斉に立ち上がり、挨拶をする。
今夜、了がここへ来ることは皆が周知していた。
絶対に、失礼があってはならない人だ。
緊張感が、室内に張り詰めていた。
「そのまま仕事を続けてくれ」
「はい!」
了の言葉に、スタッフは一斉に仕切られたデスクの中で、モニターに集中した。
このモニター内に、商品とお客様とのやりとり一部始終がリアルタイムで流されているのだ。
必要とあれば、ここから各部屋にアナウンスがなされる。
「103号室のお客様、お帰りです。生ビール2杯、スモークチーズ、生ハムで、お会計26万円です」
「お客様、それ以上の商品へのご行為は規約違反となります。お気を付けください」
「お客様の年会費は、今月末に口座から引き落とされます。お忘れなきよう、お願い申し上げます」
地上は表向きの健全なクラブだが、その地下へ潜ると、そこは高級闇クラブへと変貌していた。
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