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第二章・7

 はぁ、ふぅ、と荒い息を吐く遥は、了に起こされた。 「寝てるヒマはないぞ。お客様の体を、拭いて差し上げる。ここまでが、務めだ」 「は、はい……」  肌触りのいいタオルで、遥は了の体を拭き清めた。 「これでいいですか?」 「ああ。上出来だ」  それで、と遥は了を縋るように見た。 「僕は、合格でしょうか」 「よく頑張ったな。合格だ」 「ありがとうございます!」 「客の中には、私より酷い扱いを君に課す者もいる。それでも、やっていけるか?」 「大丈夫です」  病気に苦しむ弟を救うためなら、何だって我慢できる。  そんな決意を遥の口から聞き、了はつい甘い声を掛けていた。 「困ったことがあれば、私に言うといい。対処しよう」 「すみません」 「それで、疑問があったのだが」 「はい?」 「君は、私が初めてだったのか?」 「はい……」  でも、と遥は了を見た。 「オーナーさんが、初めての人で良かったです」 「そうか」  これは、好意と受け取ってもいいのかな?  このビルに働く人間は、全員が了にとって金儲けの道具だった。  しかし、遥には何か別の感情を覚えていた。

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