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第六章・5

『病気なら、Ωの僕がかかればよかったのに』  了は、遥のこの言葉に眉をひそめた。  確かに総じて体力の劣ることの多いΩだが、それはないだろう。 「滅多なことを言うんじゃない。弟くんも、そんなことを望んじゃいないだろう」  珍しく、たしなめるような口調の了に、遥は驚いた。  それと同時に、嬉しくもあった。 (了さん、僕と、航大のことを、親身になって考えてくださってるんだな) 「くよくよする時間があれば、前に進むんだ。弟くんの入院してる病院と、主治医の名前を教えてくれ」 「解りました」  遥の用意したメモに目を通し、了はうなずいた。 「まずは連絡をして、こちらの意向を伝えよう」 「お世話になります」  深々とお辞儀をする遥が、了にはたまらなく可愛かった。 「遥」 「はい」  じっと、目を見る。 「……」 「僕の顔に、何か付いてますか?」  了は素早く、遥の唇にキスをした。

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