41 / 87
第六章・5
『病気なら、Ωの僕がかかればよかったのに』
了は、遥のこの言葉に眉をひそめた。
確かに総じて体力の劣ることの多いΩだが、それはないだろう。
「滅多なことを言うんじゃない。弟くんも、そんなことを望んじゃいないだろう」
珍しく、たしなめるような口調の了に、遥は驚いた。
それと同時に、嬉しくもあった。
(了さん、僕と、航大のことを、親身になって考えてくださってるんだな)
「くよくよする時間があれば、前に進むんだ。弟くんの入院してる病院と、主治医の名前を教えてくれ」
「解りました」
遥の用意したメモに目を通し、了はうなずいた。
「まずは連絡をして、こちらの意向を伝えよう」
「お世話になります」
深々とお辞儀をする遥が、了にはたまらなく可愛かった。
「遥」
「はい」
じっと、目を見る。
「……」
「僕の顔に、何か付いてますか?」
了は素早く、遥の唇にキスをした。
ともだちにシェアしよう!