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第六章・4

「私の知り合いに、腕のいい医者がいるんだが。紹介してやってもいい」 「えっ」 「4ヶ月より早く、手術ができるように取り計らってもらおう」 「いいんですか!?」  ぱっと、遥の表情が晴れた。 「ただ、私も思い付きで話している。当の医者に予定を聞いたり、弟くんのカルテを見てもらったりしてからの話にはなるぞ」  それでも構いません、と遥は身を乗り出した。 「少しでも、早く病気が治せるのなら!」  解った解った、と了は喰いつく勢いの遥をなだめた。 「ところで、その。弟くんの写真などあるか? 一度、顔を見てみたい」 「あります」  そう言って遥が持ってきた写真立てには、二人の少年が仲良く並んだスナップが入れてあった。  中学生の頃の写真だろうか。  遥は今より、ずいぶん幼く見える。  そして、その横の弟。  遥をヤンチャにしたような、黒髪で目の円い少年が写っていた。 「弟も、了さんと同じαなんですよ」 「なるほど」  だけど、あんなに重い病気になるなんて、と遥は瞼を伏せた。 「病気なら、Ωの僕がかかればよかったのに」

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