39 / 87

第六章・3

「確かに小さいな」 「だから、言ったでしょう?」  六畳一間の遥の部屋で、了は苦笑いした。  だが、きれいに掃除はされているし、整頓されている。  無駄なものは一切ないシンプルな部屋だったが、小さなサボテンが棚の上に飾ってあった。 「今、お茶を淹れます」 「酒は無いのか」 「了さん、車でしょう!?」  冗談だ、と了は窓を開けて表の空気を吸った。 (ここから毎日、遥は空を見ているのか)  そしてその空は、病気の弟が入院している場所にもつながっているはずだ。 (しかし……)  いくら家族とはいえ、闇クラブに身を堕としてまで治療費を稼ぐか?  了は、遥の弟に対する深い愛情を感じ取っていた。 「どうぞ、紅茶です」 「ありがとう」 「ティーバッグのお茶で、すみません」 「構わんよ」  インスタントにしては美味しい紅茶を、了は味わった。  マグカップはあらかじめ温めてあり、ティーバッグの味を限界まで高めて淹れてある。 「美味い。さすがは遥だ」 「ありがとうございます」  さて、話だが。  マグを置いて、了は切り出した。

ともだちにシェアしよう!