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第八章・7
「了さん!」
「……痛い」
ピックで刺されても、淡々とした口調の了だ。
目はらんらんと輝き、遠山を睨みつけている。
「う。うぁああ!」
遠山は怯んでアイスピックから手を放した。
「遠山さん、退会していただけますね?」
「わ、解った!」
「それから。遥くんには、今後一切近づかないと約束できますね?」
「う、うんうん!」
「では、服を着てここから出て行ってください」
了に言われるまでもなく、遠山は急いで衣服を身につけると、走って部屋から飛び出して行った。
「了さん! しっかり!」
「ああ、泣くな。これくらい大丈夫だ。多分」
すがりついて泣く遥の髪を、了は刺されていない方の手で撫でた。
救急スタッフが駈け込んで来て、了の傷の具合を診ている。
周囲の大騒ぎをよそに、了はぼんやり考えていた。
『それから。遥くんには、今後一切近づかないと約束できますね?』
私は、このクラブへ、ではなく、遥に近づくな、と言ったのか。
咄嗟のことで放った言葉だ。
間違いなく、本心だろう。
「遥」
「はい」
「少し、痛い」
そう言って、了は柔らかく笑った。
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