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第十二章・2
了もまた普通の状態ではなかったが、自分の言ったことはちゃんと覚えていた。
『でもね。私にとっての一番は、遥。君なんだ』
『好きだよ、遥』
『遥、もう客は取るな。妬きもちで焦がれそうだ』
「愛してる、遥。返事は今じゃなくていい。失恋の傷が癒えてから、ゆっくり考えればいい」
「すみません……」
思いがけない、了からの告白だった。
遥はその言葉を胸に刻み、噛みしめながら身を起こした。
(了さんのこと、お兄さんみたいだ、って思ったこともあったけど)
接客の後で疲れた僕を指名して、ただ眠らせてくれた。
航大のために、お医者様の手配をしてくれた。
遠山さんから、救ってくれた。
これらが、愛でなくてなんだろう。
そして、もう彼に対する答えは芽生え始めている。
(でも、すぐに付き合ってください、って言ったら、尻軽だと思われちゃうかも)
なにせ、さっき失恋したばかりなのだ。
一番好きな航大から、二番目に好きだった了に、簡単に乗り換えるようなことはしたくなかった。
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