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第十二章・3
「遥、せっかくホテルに居るんだ。着替えて、展望レストランで夕食をとろうか」
「いいんですか?」
「今夜は、泊って行こう。クラブには、私が連絡しておく」
「それは……、お客様として一晩貸し切り、ということですか?」
バカだな、と了は遥の肩をそっと抱いた。
「プライベート、だよ。有給、まだ残ってるだろう?」
「良かった……」
もう、遥には客は取らせない。
例え、それが私だとしてもだ。
「それには、大規模な改革が必要だな」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない」
遥を着替えに向かわせ、了はクラブの松下に電話をかけた。
「本日よりしばらくの間、闇クラブは臨時休業にしてくれ」
『何ですって!? どうかいたしましたか!?』
「ポリスが嗅ぎまわってるという情報を得た」
『警察が』
「摘発されると、やっかいだ。しばらくは、大人しくしておこう」
『承知いたしました』
これで、よし。
嘘は少し心苦しいが、遥のためなら致し方ない。
「さて、忙しくなってくるぞ」
新しい物事に着手するのは、大好きな了だ。
胸躍る心地で、遥が戻って来るのを待った。
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