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第1話

 とある休日の朝。  会社の部下であり、恋人でもある山田から電話がかかってきた。 「助けてください、主任…! 俺…おれ…どうしたら…っ」  泣いているのか、声がおかしい。  その只ならぬ様子に、俺はすぐさま山田が一人暮らしをしているマンションに駆けつけた。何があったのかと訊いても、山田はパニックを起こしているのか、要領を得ない返事ばかりで状況が見えてこない。これは訪ねた方が早いと判断してのことだ。元々会う約束をしていたし、朝飯は食いっぱぐれることになったが、恋人の方が空腹よりも当然勝る。  山田との付き合いはもう二年ほどになる。  新入社員として入ってきた山田に教育係として俺が付くことになったのが出会いであり、たぶん恋人として付き合うことに繋がるきっかけでもあった。  「ゆとり」と呼ばれる世代の山田は、例にもれずどこかのほほんとした印象の新入社員であったが、仕事に対する意識は高く、俺の厳しめの指導にも音を上げずに一生懸命についてきた。  その姿を見て「ゆとり世代」は使えないなんて嘘だと思った。  ゆとりだろうが、そうでなかろうが、社会に出たら本人のやる気がすべてだ。スタートラインはいつだって目の前にある。山田の懸命さがそれを証明してくれた。  「ゆとり世代」で使えない人間がいるとしたら、それは単に「ゆとり」を言い訳にしている人間なのだと思う。  人懐こい大型犬のような山田に、高木さん高木さんと名前を呼ばれ、頼られ懐かれればこちらも悪い気はせず、会社の同僚の枠を超えた付き合いをするようにもなった。  そして、俺が主任になったとき、山田に告白され、俺は驚きながらも山田の気持ちを受け入れた。好きだと言われ、自分の中にも同じ気持ちがあったことに気付いたのだ。その時にも山田は泣いた。号泣して俺を抱きしめ、「好きです好きです」と何度も俺に伝えてきた。そんな山田が可愛く、俺も好きだと伝えた。……正直、押し倒され、年上の自分が受け身の側にされることに抵抗がなかったわけではないが、若さと勢いと性欲に負けた。そうして俺たちの交際がスタートして二年が経ち、今に至る。

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