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第1話『突然の別離』

死にたくねぇ。 俺はまだ、あの御方の傍にいてぇんだ。 俺とあの御方の夢が叶うまで、死んでたまるか。 けど、俺の身体は俺の心についていってはくれなかった。 「弦次郎(げんじろう)!!」 嗚呼、あの御方の声がだんだん遠くなっていく。 止めてくれ。 そんな悲しい声で俺の名を呼ぶなんて。 「殿……」 ぼんやりと見えるその麗しいご尊顔を血にまみれた手で触れようとしたが、叶わなかった。 最期に感じたのは、そんな俺の手を強く握ってくれたあの御方の華奢な手の温もりだった……。

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