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第12話『その色香に酔いしれて』
「……っ……」
布団に倒され、触れては離れる唇の柔らさと微かに香る花のような匂いは、俺に情念という感情を呼び覚ます。
「ん……んっ……」
その薄い唇の上も下も甘噛みすると、殿のお身体はびくん、と震えた。
続けざまに薄ら開いたその唇に舌を入れると、殿はたどたどしくも俺に応えようとしてくださる。
乱れていく吐息も、時折聞こえる上ずった声も、普段の殿からは想像もつかない程に淫らだった。
「弦次郎……っ……」
唇を離すと、赤みがさす御顔はいつもの冷たい眼差しでなく、どこか苦しそうに俺を見ていた。
「今ならまだ引き返せますが」
急に怖くなったのかもしれない。
それならそれで構わなかった。
「何を言う……」
殿の手が俺の長襦袢の紐を解き、自らの紐も解かれてその白く美しい裸身を晒す。
「引き返す事など考えておらぬ」
肌を触れ合わせると、殿は俺に口付けてきた。
ぎこちなく俺の真似をして舌を絡めてくるのが可愛らしくて、心を高揚させる。
「こんな穢れまくった男のどこがいいのか……殿は本当に物好きですな……」
「……っ、うるさい……っ……」
その細い首筋を舌で伝い、鎖骨、胸元と下に移動する度に殿は身体を震わせられた。
「あ……っ、あぁ………っ!!」
女子と同じなのかと思いながら胸元に咲く桜色をした突起に口付けると、殿が急に声を上げられる。
「女子はここを刺激されたら殿のようにはしたない声を上げて悦びますよ。お忘れなく……」
「うぅ……っ……」
指で押しつぶすように触れながら言うと、殿が真っ赤になって恨めしそうに俺を見た。
「女子の話はするな……っ……」
「ですが、殿は俺の後、女子と逢うのですよ?ただ致す訳ではない事、しっかり覚えて頂かないと……」
「は……うぅ……っ!!」
もう一度その突起に唇で触れ、今度は少しだけ歯を立てる。
殿は気に入られたのか、そのお身体が大きく震えた。
「はぁ……っ、あぁ……っ……!!」
それを続けると殿は大きく呼吸し、その瞳には涙が滲んでいる。
「殿はこうされるのがお好きなんですね。どんどんいやらしい顔になられてる……」
男など抱けるのかと思っていたのに、そんな殿に欲情している俺がいた。
「し…知らぬ……」
「いつもの冷たく美しい御顔はどこへいかれたのか。自ら望まれたとはいえ、こんな汚い男に穢されるなど……」
「ん……ひぃ……っ……!!」
殿の身体を強く抱き締めると、下腹部が触れ合うように身体をずらす。
互いに興奮した男根が重なり、殿はまた淫らな顔をされた。
「……殿は俺を想ってここを慰められたりしたんですか?」
「あ……あぁ……やめろ、そのような事……聞くな……」
俺のを擦り付けると、殿は顔を一層真っ赤に染められ、身を捩られる。
「殿が答えて下さらないなら……身体に聞くまでです」
「あぁ、あぁっ、やめろっ、そのようにされたら……あぁぁっ……!!」
この手で包んで自らにするように上下に動かすと、殿は呆気なく果ててしまわれて俺の腹にその熱い精が飛び散った。
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