14 / 17

第14話『結ばれた後の事』

気がついた時、雨は上がり、雷の音も止んでいた。 「弦次郎……」 俺の胸に縋り付くように身体を寄せておられる殿。 「お身体、お辛いですよね、申し訳ありません」 「謝るな。儂が望んだ事だ」 いつもの冷たく美しい顔が俺を見る。 「そうですが、俺、結構派手にやっちまって明日の稽古、出来ねぇと思いますけど……」 「何を言う。稽古を怠るなどあってはならぬ……」 そう仰って起き上がろうとした殿だったが、身体に痛みが走ったのか、起き上がれずにいた。 「ほら、だから言ったでしょう。秀太郎には俺から話しときます故……」 「お、お前は何て事をしてくれたのだ!!」 「も、申し訳ございません!!」 その白き顔に赤みを宿しながら話す殿。 「……弦次郎、次は気をつけよ」 再度お詫びの言葉を申し上げると、殿はまたとんでもない事を仰る。 「へっ?次があるんですか?」 「あ、当たり前だ……」 おいおい、当たり前ってどういう事だよ。 殿、ますます赤くなっておられるし。 「動けなくなるのは困るが、お前のあのような姿……儂は……嫌いではない……」 「殿……」 そんな可愛らしい事まで仰ってくるなんて。 俺、殿に心底惚れてしまいそうだ。 否、もうそうなっちまった……かもしれねぇ。 「弦次郎、儂が女子で穢れても、儂の傍にいてくれるか……?」 「……えぇ、そりゃ勿論」 「そうか……」 俺の返事に嬉しそうに微笑むと、殿は目を閉じた。 「もう寝る。お前もここで休み、朝餉の頃また起こしてくれ」 「……かしこまりました……」 それは俺にとって、妻と過ごした初夜よりも甘い夜になった。

ともだちにシェアしよう!