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攻めにベビードール着てって言われた時の受けの反応(ガドシリ)
「あ、ガドさんおかえりなさいっ」
「おう、一緒に帰れなくて悪かったな」
職員会議があったため、自分より後に帰宅した青年の背を追うようにして、少年がダイニングへ入ってくる。
洗面所ではなくキッチンで手を洗う男は、手を洗い次第夕食に取り掛かるつもりなのだろう。
食卓の上には青年が帰りがけに買ってきた食品がまだ袋のまま置いてあった。
少年が、その中に小包があることに気付く。
「あれ、ガドさん、この箱は?」
尋ねると、青年は濡れた手のまま羽織ったエプロンで、手を拭きながら応えた。
「これなぁ……。開けてみるか」
「?」
青年は包みを解きながら言う。
「えーと、お前も会ったことあるだろ。赤い髪した垂れ目の……」
「あ、うん。あのお兄さんがくれたの?」
「配送がダブったとか言いやがって、そんなわけないだろ……」
「よく分からないけど……、ガドさんにプレゼントって事?」
パカッと蓋を開けた青年が、ぴたりと動きを止める。
「あー……。いやこれは……。お前に。だな……」
「僕?」
聞き返されて、青年が慌てて蓋を戻す。
その顔には、口が滑ったと書かれている。
「え? なんで隠すの?」
「いや、いやいやいや、その……」
少年が、箱を後ろ手に隠す青年の背後に回り込む。
すると、青年はそれを避けるようにまた前へと箱を移動させる。
「? ガドさん……?」
ジッと正面から金色の双眸が青年を見上げる。
まだ動揺を浮かべている黒い瞳と目が合うと、少年は不安げな表情を見せた。
「……っ」
そんな顔をさせるつもりがなかった青年が、観念してその箱を食卓へと戻す。
少年は神妙な顔で箱を見つめてはいるが、手を出すつもりはないようだ。
青年は、渋々自身が閉めたばかりの蓋を開けてみせた。
「あ……。女の子用の服……?」
中を覗いた少年が、不思議そうに呟く。
「あー……いや、その、だなぁ……」
青年がなんと説明したものかと戸惑っている間に、少年はそれを手に取り広げた。
「わあ、これすっごく薄いね、さらさらしてる。リボンもついてる。かわいいね」
緊張が解けたせいか、訪れた安心感の中、少年がふわりと嬉しそうに微笑む。
青年はその笑顔に目を奪われた。
(お前の方がずっと可愛いよ!!!)
青年が歯を食いしばって、顔が緩むのを堪える。
横目でそっと、にこにこと笑う少年と、その手の服を交互に見る。
(いや、これシリィに絶対似合うだろ……。あいつ本当に何考えてんだよ……)
「ガドさん?」
「んんっ?」
不意に下から覗き込まれて、青年が精一杯平静を装う。
それでも隠しきれず緩んだ口元と、染まった頬を見ながら、少年は思う。
(ガドさんなんだか嬉しそう……)
この人が楽しいと、僕も楽しくなるし、この人が嬉しいと、僕も嬉しくなる。
それを知っている少年は、目の前の青年をもっと喜ばせたいと願う。
この不器用で、とても優しい人を。
少年は、なんとなく、喜んでくれるような気がして、両手で肩紐を握っていたその服を自身の胸に当ててみる。
「えっと、その……。に、似合う? かな? ……なんて……」
「似合う!!」
少年の言葉が終わらないうちに、力強く返ってきた返事に、二人は真っ赤になる。
「……」(ど、どうしよう……嬉しい、けど、恥ずかしい……)
「……っ」(これじゃまるで、着てくれって言ってるようなもんじゃねーかっ!)
俯いた二人が、同時に顔を上げる。
ぱち。と目が合って、二人はまた真っ赤になって俯いた。
【この後、ちゃんとご飯を食べて、お風呂に入ってから、めちゃくちゃ以下略】
ー おまけ。ラディーとクーヤの場合(研究所時代) ー
その日、ラディーはヒラヒラした布を手に部屋に入ってきた。
「これを着てみてください」
「うんっ」
【完】
【でもやっぱりやることはやった】
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