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一度きり
送り狼は知っている。化け狐が、俺の事を特別に感じているかもしれない事。でもその気持ちを、抑え込んで見ないようにしていること。そこから導き出される答えは、篠崎に抱いてもらえるのが、この一回きりだろうということを。
「…篠崎」
顔を見せたくなくて、漢三は震える手で化け狐を抱きしめた。
「俺はお前のこと好きだよ。」
…ごめんな。そう赦しを請うて泣く。愛に飢えた狐は、欲しがった愛をただかけ流して立ち尽くす。受け取るのが怖いのだ。いつか、無くなってしまうから。もしも、離れていってしまったら…今よりもっと、寂しくなってしまう。付かず離れず、そっと手を濡らすことのできる立ち位置でいたい。…それが相手を傷つける行為でも。
だからいつも、感謝だけは伝える。
「ありがとぉな」
「だめだ、篠崎…我慢できねぇ」
そう言って押し倒してきた漢三を制止した。
「あかん。今日はウチが上やる。それならええよ」
「…え?」
晴天の霹靂。思いもよらないことが起きたものだ。まさか篠崎が…俺を抱きたいと言うなんて。
いつもなら素直に抱かれる篠崎が珍しく断ったと思ったら、今まで一度もなかった提案をされたのだから度肝を抜かれた。
「お前…俺を抱きたいとか思えるのか…?」
「…いつもウチがされてばっかりやん…ウチかて依頼で男抱いたりしよんねやで?抱くくらい造作もないわ。嫌か?」
「あ…いや…嫌じゃねえけど…意外っていうか…その…」
「ホンマに嫌なら言うてな?やらへんから」
「あぁいやそうじゃねえ!……ぁ…その……あー…いや。抱いてくれ。」
「…ええんか?」
「ああ。」
篠崎が抱きたいと言うのには理由があった。
先日、漢三が他の男に抱かれたのだ。それは強姦であり、篠崎の目の前で行われた。
自分の売春相手に犯される漢三を見て、死ぬほど苦しかったのを覚えている。
自分のせいで、漢三が他の男に組み敷かれている事実がどうしても悔しくて、悲しくて、申し訳なかった。
自分が漢三を抱くことで、それを上書き出来れば…などという、罪滅ぼしのつもりなのだ。
下準備を済ませ馬乗りになって、それでもまだきっちりと着込まれた漢三の着物を崩す。着物の襟と襦袢の襟を緩めて動きやすくした後、篠崎は漢三の耳元に唇を沿わせ囁く。
「気持ちよくしたるからな…?」
「お、おう…」
普段攻めに回る漢三は、どうしたらいいのか分からなくてガチガチに緊張していた。
「ふは、とりあえずその力抜きなや?イけるもんもイけんくなるよ?」
「そ、そう言われてもだな…」
「んふ、普段通りにしとってや」
くい、と顎に手を添えて上をむかされ唇が落とされる。普段通り…普段通り…と意識していつものようにキスをした。
「…っは…」
とろ、と涎が垂れて己の唇を汚す。篠崎がそれを舐めて、ふふ、と微笑んだ。
「その調子」
またキスを落とされたので優しく啄んでやる。篠崎に腕を掴まれ、首に回せと促された。大人しく篠崎の言う通りに、首に回した腕で彼を抱き寄せる。
ぽす、と胸に手を当てられて唇が離れる。
「ふふ、漢三…ドキドキしてる」
「…あたりまえだろ…」
ちょっと恥ずかしくなってそっぽを向くと、かわええなぁ、と頭を撫でられた。
きゅん、とした。
「な、漢三。大丈夫そうかや?」
「え、ぁ…あ、ああ」
「嫌やったらホンマに言うてな?」
そう言って篠崎は俺の首筋を舐めはじめた。
…嫌なわけがない。篠崎にされるならなんだっていい。殺されてもいい。お前にされるなら、なんだって嬉しいよ、篠崎。
そう思ったら自然と力が抜けた。篠崎が俺の着物をはだけさせて鎖骨にキスをする。かわいい。俺を愛撫しようと俯くたびに篠崎の長い青みがかった髪が垂れる。それを耳にかけるその姿が美しい。俺を舐めるその舌についているピアスが、時折金属の硬さを感じさせる。
考えているうちに篠崎が俺の帯を解いた。腰紐も解かれて着物を暴かれる。着物だから普段から褌なんて着けてなくて、はだけた着物の下から屹立が現れた。
「ぁは…勃つの早やない?」
「…しょーがねぇだろ…」
視線をそらして腕で口元を隠す漢三が可愛くなってしまった。
「んふふ、触って欲しい?」
「……お前の好きにしてくれ」
はぁい、と返事をして指先でちょんちょんと先を触る。ふるふる揺れるそれを優しく握ってそっと扱いた。
ゆっくり、ゆっくりと刺激を送ってやる。だんだん漢三の息が荒くなってきて、握られたモノがそそり勃って…篠崎はパッと手を離した。
「……っ…」
漢三が物欲しそうな顔をした。
「あかんよ、まだこれからなんやから」
そう言って指にワセリンを塗る。
「さ、挿れるで」
「…ああ」
漢三は、ごくりと唾液を飲み込んだ。
「……ッ……く…ぅ…」
「力抜いてや漢三、ほれ、息吐いて、吸って」
「は、は…っはー…っふ、」
「ええ子やね、よしよし」
「ふ……は…はー…ッ」
ギリ、と歯を食いしばる。肛門から指を挿れられて、異物感に圧倒された。
篠崎はいい子、いい子と腹を撫でてくれる。
俺は脂汗を浮かべて耐えた。
「…っ…は…っ……はぁ、は…っ」
「よしよし…ちぃと慣れてきたかね?」
「…っ…ぁ、ああ」
「二本目入りそうかや?」
「…い、ける…と、思う…」
はぁ、と息を吐くと、篠崎がそっと唇にキスをしてくれた。
「無理はせんといてな?」
「…大丈夫だ」
にこ、と微笑んでやると篠崎は安堵した顔になる。
「ほな、もうちっとしたら二本目挿れるよ」
「ああ」
待つ間、篠崎は器用に片手でスラックスを脱いで下半身を露わにした。
「…篠崎…お前」
「悪いなぁ…ちぃとばかし勃ってしもた」
ふー…と興奮した息を吐く篠崎が、いつもより雄々しく見えてしまう。
まだ勃ち上がりかけのそこを見てしまって、漢三は生唾を飲んだ。
「さて…そろそろ二本目挿れるよ?」
「えっ、あ、ああ」
挿れられている事をすっかり忘れていた。慣れてきたらしい。
「ゆっくりやるからな、痛かったら言うてな?」
「おう」
穴の筋肉を解そうと人差し指が出たり入ったりする。にゅぐにゅぐ、と二度目の感覚に先日の強姦を思い出して漢三は顔をしかめた。
「大丈夫かや?」
「…大丈夫」
なら良かった、と篠崎が指を抜き、中指と人差し指を併せて二本、ゆっくりと穴にねじ込んだ。
「…ぁ……ぐ…っ」
「ゆっくり息吐いて、吸って」
「は……ふ…っ…はぁ…」
「そうそう…ほら、力抜いて…」
長く息を吐ききったところで篠崎が言う。
「頑張ったな、ちゃんと挿入ったよ」
「ぁ……う……はぁ…っよ、よかった…」
くた…と力の抜けた漢三の萎んでしまったそこを撫でる。
「…」
「篠崎…」
「ん?」
「いつもごめんな…こんな苦しいこと…」
「…ええよ、漢三のはいつも痛くあらへんし。噛むけど」
「…他の奴は痛いのか?」
「…そこ聞く?…まあ、自分勝手なのが多いからな」
「そうか…」
「そんなんええから。今はウチの事だけ考えてや」
「…おう」
篠崎の手が俺の体を弄る。腹から胸へ、そこから下がっていき萎えたそれを優しく触る。温かい手で触れられて、熱をもつ。
行き場のない両手は頭の下の枕を握る。また少しずつ勃ってきたそれを篠崎が優しく撫でる。と、同時に中に挿れた指を少し動かした。
「…っ」
「良いとこ見つけるからそれまで我慢してな?」
そう言って中をまさぐる。ぐにぐに、にゅぐ…といじられて違和感が爆発しそうになったその時
「…ッ!」
びく、と体が跳ねる。篠崎に握られていたそこから先走りが漏れた。
「あは、あった…♡」
くりくりくり、とそこだけを刺激されて体が反応してしまう。
「っあ、…ッ!…っ、う、あ…っ」
「かわいい…」
びく、びくんと脚が動く。先走りが溢れて止まらない。
「っ、ちょ、待っ…っあ…ッ!」
「漢三…♡」
「しのざき、篠崎っまっ、まってくれ…っ」
上半身を起こして腕を掴まれた篠崎が漢三の顔を見るとぼろぼろと泣いていた。途端手を止め問いかける。
「っごめん!痛かったかや…?」
「ちが…違う…」
「どしたん…?」
「お、俺が俺じゃなくなるみたいで…こわい…」
「…」
抱き寄せて言う。
「…ごめん、やっぱやめるか…?」
「…っ」
ずび、と鼻をすすって漢三は篠崎に抱きついた。
「いや…悪い、続けてくれ」
「本当にええんか?」
「頼む」
懇願するように言われて仕方なくまた指を挿れた。今度はすんなり入って、息も苦しくなさそう。
「篠崎…」
「なに?」
「…好きだ」
「…今言うかね」
「思ったときに言わねえと忘れちまうだろ」
「おまんのそれは忘れる事ないと思うけどね」
「それでも、だよ」
しようのないやつめ、と篠崎が苦笑する。そんな篠崎を見て俺は篠崎の心配をかき消すように微笑んだ。
「ほら、続けて。早く」
「うん」
先ほどの場所をまた探る。
「あ、見つけた」
こり、と優しく擦ってやると漢三の脚がびくりと動いた。
くに、くに、と緩く押すと、それに合わせて先走りがこぼれる。
「…スケベやなぁ」
先走りでヌルヌルになった手を漢三に見えるように翳した。
「お前ほどじゃ、ねえよっ…ぁ、ん…っ」
「声ダダ漏れやんか」
「し、かたねぇだろ…っ…うぁ…ッ」
「気持ちええ?」
「………っ…ああ。気持ちいいよ」
上気した漢三の頬が赤い。興奮しているその姿にこっちが当てられてしまう。
「漢三…ちょっと…早いかもしれんけど…」
「なんだ?」
「い、挿れたい…」
かあ、と顔を赤らめた篠崎からの申し出に、漢三は即答した。
「いいぜ、挿れろよ」
「うう…男前やぁ…」
自分の情けなさに嫌になった。
「漢三、ほな挿れるよ?」
「ああ」
ワセリンを塗ったそれを、とん、と合わせてゆっくり、ゆっくりと沈めていく。
「…っ………く……」
「は……力…抜いてや…漢三…」
「…っは…はぁ、は…っ」
「ん、そうそう…うまいな…」
ぬぷ、とカリが入り口を通り抜け、そして肉棒が奥へと進む。
「…ぁ、あ…っ」
「大丈夫かや?」
「…ぅ…ああ、大丈夫…大丈夫だ」
ぐ、と奥へ進めた。
「ぅあッ!」
びくん!と体が跳ねる。カリが前立腺を刺激したらしい。そこで浅く抜き差しすると漢三はビクビクと体を震えさせた。
「あ、ぁ…っ…く、ぅ、あ……ッ!」
「あは…気持ちいい?漢三…」
「き、もち…ッいい…っぁ、ぐ…っ」
「声が全然気持ちよく無さそうなんやけど…」
「し、かたない、だろ…っ一回しか…やったことねぇんだぞ…!」
「もっと素直になりなや?声、抑えずにそのまんま出してみ?」
「ん、ぁ…っんな、こと…っ言っても…」
「ん…じゃあ気持ちいいとこ、口に出して教えてや?」
「っ…?…ぁ…おう…」
ぐちゅ、くちゅ、と音が鳴り、篠崎の肉棒が俺の中を撫でる。
「…ん…ん…っ」
「なるべく優しゅうしたるから、気持ちよかったらちゃんと言うてな?」
「あ、ああ…」
「ここは?」
くに、としこりを擦られる。
「っあ…!き…きもちいい…」
「ん…じゃあしばらくここ撫でようかね」
する、する、と優しく撫でられてふわふわと甘い痺れが腰にくる。
「う、ぁ…ん……篠崎…」
「ん?」
「そこ、いい…」
にこ、と篠崎が微笑む。よかった、と呟いて口づけをした。
「奥いくよ」
「ん」
ぐ、と押し進めて奥に当てる。
「どぉ?」
「なんか、違和感…?」
「ふふ、それな、慣れたら気持ちよくなるよ」
「そうか…」
こつ、こつ、と優しく奥に当てられて、慣れない感覚にぞわぞわとした。
「ゆっくりやるから大きく動かしてもええ?」
「ん?ああ」
「ほな、なんかあったら言うてな?」
「おう」
ずろぉ…とナカを引っ張られ、そしてぐちゅ、と奥を突かれる。
「ン…ぁ、あ…っ…は、…あ…」
ぴく、ぴく、と気持ちいいところに当たる度、漢三は腰を震わせた。
ゆっくり、ゆっくりと抽送されるそれに意識を集中する。
「ちょっと速めるよ」
そう言って篠崎は腰を振る速度をあげた。
「ぁ、ぅ……は……んっ♡」
とちゅ、と奥を突かれたタイミングで漢三の口から甘い声が上がる。
篠崎がぱっと漢三の顔をみて、ハッとした漢三は顔を赤らめた。
「わ、わるい…変な声出ちまった」
「あは…漢三…♡」
嬉しそうににやける篠崎が覗き込んでくるから、漢三は両手で顔を覆って隠した。
「見ないでくれ…!」
「恥ずかしがるなや、大丈夫やから」
「いやでも…」
「いつもおまんが言うやんけ。ウチしか見とらんよ」
「……しかたねえ」
「ふふ、気持ち良かろ?」
「ああ…」
漢三の赤い耳にキスをして篠崎はまた抽送を開始した。
くちゅ、ぐちゅ……ぱちゅ、ぱちゅっ
慣れてきたのを見計らってだんだん速く、強く突いてやる。
「あ、あっ篠崎っ……ぁ♡」
「そうそう、もっと声出してや」
「ん、ん♡……は…っ」
「気持ちええ?」
「き、もちい…っ♡…あ♡」
奥を優しくとんとんされて、漢三はふわふわとした意識の中、快楽を追った。
「漢三、ちょっと激しうするよ」
「ん…?…ああ」
漢三の頬に口づけして体を抱き寄せ固定する。密着した状態で腰を揺らした。
「あ、あッ…ぐ、ぅ…っ♡」
ぱんっぱちゅっ、ごちゅっ
「ぅあ♡っは、あ…ッ♡……んぁ!」
「漢三っ大丈夫か?まだいけるか?」
「だ、大丈夫、大丈夫…っ」
「わかった、しんどかったら、言うてなっ」
「ん、んっ♡」
ごつごつ、ぱちゅっ、ぱんっぱん、がつがつと奥まで激しく打ち付ける。
「あ、あッ♡…ぁ…!…んぁッ!ぁぐ、ぅ、はぁっ」
「漢三…漢三…っ」
「し、のざき…ッ♡…あっあっあっ♡…っあ♡」
「漢三…ッ♡」
ごちゅごちゅごちゅっ!
「ひぁ♡うあ♡あ、や、やだ、あっ♡しのざき…っ♡」
漢三の言葉に抽送を止めて聞く。
「嫌かや…?」
「ぁ…♡や、じゃない…大丈夫、だから…」
篠崎…と漢三に抱きしめられて安堵する。
「悪い、やりすぎた」
「いいよ…気持ちよかった」
荒い息を吐く漢三が篠崎の頬を撫でた。
「ちくしょ…いつでも漢三はかっこええんやな」
「…そうか?」
「かっこいいよ。悔しい」
漢三は呆れたようにふ、と笑った。
「…張り合ってもしょうがねぇだろ。俺には俺の、お前にはお前の良さがあるだろうに」
「………そういうとこやで」
「…なにが?」
「もういい。ウチにはウチの、ね。うん。」
漢三の額に軽くキスを落とす。
「………こんなとこ他のやつには見せんといてな?」
する、と首筋を撫でて黙っていた篠崎が、ふと泣きそうな顔で微笑む。
「…はは、当たり前だろ」
気持ちを、困ったように笑って誤魔化した。
「二度とねえよ」
そう微笑んだ漢三にズキリと胸が痛む。
顔を見て謝る勇気がなくて、漢三に覆いかぶさり抱きしめて言う。
「…ごめんな、ウチのせいで」
ぐ、と抱きしめる腕に力が入った。
「…声が震えてる。無理するなよ。」
優しく頭を撫でられて、篠崎の目にじわりと涙が浮かぶ。
「…っ…く、…ぅ…」
「…泣くなよ。俺も気にしないから」
「だって…怖かったろ…?今だって、怖いはずや。いつもの漢三と違う。」
「…そりゃ…ああ…うん、まあ。でも今はあいつらじゃない。篠崎だ。」
「…っうん」
「お前になら、何されてもいいよ」
「…くそ、なんでそう言えるんや」
いっそ恨んでくれた方が楽だとも思った。
「ほら、続きしようぜ。どっちもイッてないだろ?」
「…うん」
ぐす、と鼻を啜って篠崎が頬擦りした。そんな彼が愛しくなって頭を撫でてやった。
「漢三…」
肩口に顔を埋めたまま篠崎が聞いてくる。
「ん?」
「あんな…ウチ…ウチが…もし……もし好きやって言うたら嬉しいか?」
「…!」
漢三は驚きのあまり声が出なかった。
「…うれしいか?」
「ああ…!嬉しいさ。当たり前だろ…!」
「…そうか」
むくりと篠崎が起き上がって微笑んだ。
「今のは忘れてくれや」
「な…」
漢三は続きが出てこなかった。篠崎が泣いていたから。
「…っごめんな」
そう言って泣きじゃくる篠崎が、とても哀れに見えた。
どうしたってこの気持ちに応えるつもりはないんだな、と分かってしまって、とても寂しくなった。
「…篠崎」
顔を見せたくなくて、漢三は震える手で化け狐を抱きしめた。
「俺はお前のこと好きだよ。」
化け狐は答えた。
「ありがとぉな」
しばらく抱き合っていたのを先に崩したのは篠崎だった。
「ほな、続きしよか」
そう涙の跡もそのままに微笑まれた。
「……ああ」
もう二度とこんな機会はないだろう。
「よろしく頼むよ」
深く深く合わされる唇が熱を伝える。お互いに寂しくて、ぴっとりと肌をくっつけながら愛撫し合った。
するり、漢三の頭を撫でてやると彼は息をこぼして固まる。ふ、はぁ、と吐息と一緒に身体が震えて感情を表した。
「気持ちええ?」
「ん…」
すりすりと狼耳の中を撫でられて漢三は眉を下げた。熱い息が漏れる。
「は………ぁ、ん…っ」
トクトクと心臓が速くなっているのがわかる。熱い。
かぷ、と耳を咥えられてびくりと震えた。
「ぅあ…♡」
ぞくぞくっと背筋を走って腰にくる。
篠崎はかぷかぷと優しく甘噛みを続けた。
「ん…ん…っ」
もじ…と下半身を動かすと篠崎の太ももに半勃ちのそれが当たる。
「漢三…勃ってきたん?」
「う…ぁ、あぁ…」
ふうふうと荒い息で答えると、篠崎はホッとしたように「よかった」と微笑んだ。
「…馬鹿、気ィ使ってんじゃねえよ」
「いつもおまんも気ィ使ってくれるやろ」
「う…」
「使わさしてや」
ハの字に眉を下げた篠崎が言うから、仕方なく甘えた。
「じゃあもっと触ってくれ」
「ん。どこがいい?」
「…中」
「……うん、わかった」
体制を整え漢三の傍にあぐらをかき、割れ目に手を滑らせて指を穴に引っ掛ける。
ちょんちょん、と触って穴の周りをまたほぐして、声をかけてゆっくりと指を沈めた。
「……は、ぁ…」
漢三の腰が反る。内壁に沿って優しく擦ってやる。
「ん…お前のも勃たせてやんねえとな」
漢三が上半身を起こして篠崎の竿をそっと撫でた。
「ええよウチは…自分で扱くから」
「やらせてくれ」
「…はい」
しゅ、しゅ、といつもの手際で扱かれる。気持ちいい。漢三とはもう何度したかも覚えていないくらい行為をした。
多分漢三には、ウチの気持ちいいとこ全部知られてるんやろうな、とうっすら考えながら腰を震わせ、指で前立腺を優しく刺激し続けた。
くち…っ、くちゅ、ちゅく、と先端をくじられた。イきたい。そろそろ出したい。あー…あかん、イきそ…
「篠崎」
「んぇ…?」
「挿れてくれ」
「…ぁ…うん…ごめん」
ぽや…とした頭で穴に竿を当てる。ヌル…と先走りを擦り付けて、中心に力を込めてゆっくり沈めた。
こつん、と奥に当たる。「ん…」と漢三がこぼす。
「動くよ」
「待て」
「なに?」
「キスしてくれ」
「ん?うん」
目を閉じて漢三が待ったから、篠崎も目を閉じて、軽く触れるだけのキスをした。
「…もっと」
「ん」
啄むように落としてやる。
「もっと」
「うん」
ちゅ…と唇が離れる。
ぐい、と手を首に回されて抱き寄せられた。
「もっとお前を俺にくれよ…」
「…」
ぐらり、決意が揺らいだが、篠崎は何も答えなかった。
「篠崎…」
「…やめるか?」
「だめだ。やめないでくれ…頼む」
「ん。動くよ」
緩やかに抽送を始めた。
「は、ぁ…っ…あ…っ篠崎…っ」
「…ん」
「…っ好きだ、好きだ…っ」
「…っ」
責められているみたいで苦しくなって、仕返しに奥を突いた。
「あっ!…あ、ぁっ…ぅ、あ…!」
「…ッ」
じわじわ溢れる涙を堪えてぐ、と噛み締めてごつごつと突き上げる。
「ぅあっ!…は、ぁっ、好きだ、好きだっ…っ篠崎…!」
「…黙っててや…!」
「…ッ!……っ、ん、く…っ」
突くたび漢三の下がった狼耳が揺れる。腰を持ち上げているから尻尾はピンと伸びていて、しかし時折痛いのか、ぼっと逆立ったりした。
「は、ぁ…っあ、…っ…篠崎…っ篠崎…っ」
がくがくと漢三の腰が震える。眉間に皺を寄せて、ぎゅっと瞑った目には水滴が浮かんでいた。
「篠崎…」
疲れ切った漢三がぐったりと力を抜き、顔が傾いた時にぼろ、と流れた涙を見てハッとした。
「…ごめん、漢三。やっぱりやめよう」
「…っいやだ」
「ウチだって嫌や」
「いやだ!やめないでくれよ…たのむ…たのむから…!」
「…」
「篠崎…!」
「…だめや」
「…なんで…っ俺にも…俺のことも…愛してくれよ…っ」
「…できん」
「…っ」
「…できんよ…悪い。今日のことは忘れてくれ。互いのためにならん」
「…篠崎…」
「うるさい!もう帰ってや!!荷物まとめて出てってくれ!」
「…っ…ごめん、押し付けすぎた」
もう篠崎は何も言ってくれなかったから、漢三は簡単に着付けして謝りながら帰っていった。
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