16 / 26
女
くぁっとあくびした狼は前足に触れた柔らかいものが心地よくてふみふみと足を押しつけた。
起き上がり伸びをしてブルルッと首を回す
と、目を見開いて硬直した。
(…女…?!)
正体がバレては敵わないと慌てて人に変化し昨日の記憶を辿る。
ええと確か仕事が終わって篠崎の家で晩飯を馳走になって…そのあと流れで篠崎と…寝…?
(篠崎は!?)
バッと周りを見渡せばいつも通りの篠崎の寝室で、昨日脱ぎ散らかした着物や服が散らかっていた。
とりあえず襦袢を羽織って腰紐を締め、恐る恐る女を確認する。
青みがかったサラサラの長髪を顔からそっとどけると見覚えのある刺青と口元の黒子。おまけにピアスも揃っていて、「あ、なんだ篠崎か…」と呟いた。
ホッとしてベッドに腰掛けると後ろから声がした。
「…漢三…」
「どうした?」
振り向いて問いかけても返事はない。どうやら寝言らしい。
微笑んで頭を撫でてやっていたら起こしてしまった。
「…ん」
「悪い、起こした」
「んにゃ、ええやよ」
身体を起こしてベッドに正座した篠崎が寝ぼけ眼で髪留めを探す。
「ん〜?」
「ほら」
渡してやると「ありがと」と言って髪を結い始めた。
たゆたゆと胸が揺れて目のやり場に困る。
ふい、と顔を背けて聞いた。
「なんで女に化けてんだよ」
「ん?なんでやろ、寝ぼけとったんちゃう?」
「お前それ他のやつの前でやるなよ…?」
「だーいじょぉぶ!いっぺんもやったことない!」
ふんすと胸を張った篠崎を見ないようにしながら「飯作ってくる」と立ち上がろうとした。
がしりと腰に抱きつかれて動けなくなる。
「まだ行かんといて〜」
うだうだと篠崎がくっついてくる。むにむにと胸が腰に当たる。
「…分かったから離れろ」
「なんで?」
「なんでもいいから」
「…いつもはキスしてくれるやんけ」
「…」
全然目を合わせようとしない漢三にピンときた。
「漢三もしや…女見るの久しぶりなんやろ」
にたぁと笑った篠崎に擦り寄られて固まってしまった。
「ん?ほれ。久しぶりの女はどうや?揉んでもええねんで?」
「…っ」
ぐ、と口を真一文字にした漢三にぽかっと頭を殴られた。
「あイテ」
「恥ずかしいことしてねぇでさっさと支度しろ。出かけるんだろうが」
はーい、と口を尖らせて篠崎は服を着た。
「…なんで女のままなんだよ」
「たまにはええやん?こういうのも」
「…」
いつもは同じくらいの身長なのに今日は篠崎がいつもより少し低い。
ぽよんとしていた胸はサラシに潰されて女着物の中に収まっている。
「さ、行こうや漢三」
袖を引いて先を歩き出した篠崎に続く。
「ああ」
「ついたー!」
わーいと大人気なく両手をあげて喜ぶ篠崎がデパートのバザールへと駆けていく。
「あ、おい走るな!」
手を引っ張って引き留めた。
(うわ、手首細…っ)
「むぅ」
「あ、危ないだろ」
「ほんなら漢三も早よ一緒に来てや」
「じゃあ…」
「なに?」
「ん」
左手を差し出した。篠崎がふふ、と笑ってするりと指を絡め、手を繋ぐ。恋人繋ぎなんて珍しいな、と思いながら、いつもより小さな手にどきりとした。
「わぁ…」
ショーケースに並んだ甘味をキラキラとした目で追う篠崎は、まるで子どものようだ。
(なるほど…男のままじゃこれほどじっくり見れんな)
持っててや、と言われた篠崎の鞄を片手に、篠崎に手を引かれて歩く。
「あれも美味しそう…これも…あっ、見てや漢三!ほら!」
「ぶは!」
今にも涎を垂らしそうな篠崎が面白くて吹き出した。
「なんよ」
「く、ははっ!いや…悪い。あんまりにお前が可愛いもんだから」
篠崎はぱちくりと目を瞬いた後、「そうやろ?」と得意げに笑った。
「そこの恋人さん、試食どうかね?」
チョコレート店のおじさんが声をかける。
「ああ、その店ならこの先に…」
「ほなはよ行こうや!」
「ちょ、ちょっと!そこの別嬪さんとお兄さん!」
「ん?」
別嬪さん、という言葉にくるりと振り返った篠崎に、おじさんはチョコレートを渡してくれた。
「お二人さんお似合いだねえ。今日はデートかい?」
「ん…」
もぐもぐと篠崎はチョコレートを頬張る。
漢三は口籠った。
「あ…えっと…」
「手まで繋いで若いねぇ。今日は楽しんでってな」
「あ…はい…ありがとうございます」
「んまい!」
にこっとおじさんに微笑んで篠崎はチョコレートを一箱買った。
和三盆、かすていら、着物に洋服。
端から端まで見て回って、漢三の両手にいっぱいになるほど篠崎は買い物をした。
「あとコレだけ見さして!」
そう言って漢三を置いて店に入って行った篠崎を待つこと20分。
「…遅いな」
ぼうっと突っ立っていると遠くから走る音とがなる声が聞こえて耳をそちらに向ける。
「どけやオラァ!」
奪い取った警棒で目の前のショーケースを割りながら男が店に入って行った。
バラバラと降り注ぐガラスから頭を袖で隠して守り店に目を向ける。
叫び声と怒鳴り声が飛び交う中、3人の警備員が店の中へ突撃して行った。
「…っ」
まだ篠崎が中にいる。助けないと。
腕に刺さったガラス片もそのままに店の中へと駆けた。
「コイツがどうなってもいいのか!?」
ギラリと人質にナイフが突きつけられ周りがどよめく。
「篠崎ッ!」
掻き分けて中心へ出ると、やはり篠崎が人質にとられていた。
「…あのぉ…兄ちゃん…もうやめとき…?漢三がきてしもうた」
篠崎が心配して男の腕の中で宥める。
「女は黙ってろ!殺されたいのか!?」
篠崎の喉にグイと切先が押し付けられた。
「…テメェそいつに傷一つつけてみろ…殺すぞ」
「あ?誰が殺すって?やれるもんならやってみろや!!」
ぐっと切先が喉に入る。
「ぁいてて…なぁもうやめとき…悪いことは言わへんから…」
「じゃかぁしい!!黙って」
ろ!!!と男が言うと同時に獣の目をした漢三の拳が横殴りに彼の首を掻っ攫って行った。
「がァ…ッ!」
ドッと倒れ込んだ男に見向きもせず漢三は篠崎を抱き寄せた。
「無事か?」
「漢三…ちゃんと手加減したか…?」
心配する篠崎のすぐ側で男は警備員達に押さえ込まれていた。
「クソッくそッ!!テメェ…ッ!」
抵抗した男が寝たまま警備員を蹴飛ばし腰からチャカを抜いて、撃った。
バン!という音が鳴る寸前、すぐ側で泣く子どもに気づいた。俺が動いたら先にいる子どもに当たる。
(クソ…!)
ガバッと篠崎を抱き上げて弾の軌道に自分の足を持ってきた。
ドシュッ!
「ぐぁッ!ぁ゛、ゔ…ッ」
ぶわりと脂汗が溢れた。
がくん!と膝をついて呻く。それでも篠崎だけは離さずに抱きしめた。
「漢三、漢三ッ!」
「騒ぐな…大丈夫だから」
「そんなわけあるか…!」
痛すぎて左の膝下の感覚がない。だくだくと熱が流れていく。白足袋が真っ赤に染まっていた。篠崎が止血しようと仮紐を解き膝に結ぶ。キツく締め上げられてうっと声を上げる。
警備員が誘導する声を聞きながら篠崎の手を握り病院へと搬送された。
「全治五ヶ月やって。頑張ったな、漢三」
目を覚ました漢三の横で男の篠崎が微笑んだ。
「ん…ああ」
「ありがとな、ってみんなが言うとったよ」
「そうかい」
「ウチからも。ありがとぉな」
「…ああ」
にこりと微笑んだ漢三に篠崎が顔を寄せる。
あと少しで唇が触れる、というところで声がかかった。
「宗旦、漢三起きてる?」
ぱっと離れて取り繕う。
「あ、あぁ明臣か…起きとるよ」
「よかった…これ、お見舞いに。」
フルーツの盛り合わせを棚に置いてカーテンをくぐったのは薄桃の髪をしたいかついピアスの男。そう聞くと怖い人を想像しそうだが、穏やかな顔をした優しそうな青年だった。
「悪いな、わざわざ」
漢三が謝ると、明臣は「いいんだよ。気にしないで」と答えて、
「それから続きも気にせずやって?」
と促した。
「…見てたのかよ」
「えへへ…カーテンに影が写ってて…」
「…漢三」
「ん?」
振り向いた漢三の顎に手を添え篠崎からキスをした。
「…!?」
「わぁ、ほんとにやった」
「んふふ」
ぺろ、と唇を舐めて篠崎は微笑んだ。
漢三は顔を真っ赤にして口元を覆った。
(今まで篠崎から人前でこんなこと…しなかったのに…)
どっどっ、と心臓が早鐘を打つ。びっくりした。ごく、と唾を飲んだ。
「ふふ、なんか最近宗旦と漢三、雰囲気変わったよね」
「そ、そうか?」
「うん、うまく言えないけど…なんか、ね」
「そぉたいして変わらんよ。ウチはいつでもウチやし」
「まあ…俺もそんな変わったつもりはないな」
「うん…あまり長居しちゃ悪いしもう帰るね。お大事にしてね」
「…あ…悪いな…ありがとう」
「もっとおったらええのに〜」
「邪魔しちゃうでしょ」
困ったようにそう言って明臣は帰って行った。
「…邪魔しちゃうんやって」
「…馬鹿、病室だぞ」
「…ちょっとだけ」
「……仕方ないな」
片手で篠崎を抱き寄せて唇を合わせた。
「…ん…っ……ふ…」
ちゅく、と中で舌が絡む。
「ん……は、ぁ…」
ぐ、と篠崎の肩を押す。
とろりと銀の糸が紡がれて途切れた。
「…終わり」
「…漢三」
「だめだ」
「…」
しょぼ、と肩を落とした篠崎の頭を撫でてやる。
「退院したら好きにしていいから」
「…って言ったやんな?」
「言ったけど…」
まさか初日に跨られるとは思っていなかった。
「傷が開いたらお前のせいだぞ」
「安心してや、漢三は動かんでええから」
にこ、と言った篠崎に脳内で反論した。
(どうせ動きたくなるに決まってるだろうが)
「…任せるよ」
ため息をついた。
「ふふ…今日はこっちでやろうか」
どろん、と篠崎が女に化けた。
ぴた、と漢三が固まった。
「ホントはあの日の夜しようと思っとったんやけど…あないなことなってまったからな」
「…」
「ほぅら、好きにしてええんやで?」
体が縮んだから、ずるりと着物が肩から落ちる。ぶかぶかになったシャツから乳首が透けた。
篠崎がシャツをまくり、腕で乳を持ち上げて見せつけてきて、漢三は紅くなった顔を隠して一言言った。
「しまってくれ」
「…?女、嫌か?」
「…嫌じゃねえけど…その…」
「嫌やないならなんなん」
「…」
「漢三?」
「…笑うなよ?」
「うん」
「やったことねえんだよ…女とするの」
「えっ?」
「…お前は男だったから、男の練習しかしてこなかった。女は…狼しか知らん」
「か、漢三…」
「…そんな目で見るな」
「う、ウチのせいでそんな…」
はわわ、と口元に手を当てた後、ピンと思い当たった。
「ってことは、ウチは今日、漢三の初めてを貰えるってことかや?」
「……まぁそうなるな…」
顔を逸らした漢三の見ていないところで、ぱぁ、と篠崎の顔が綻んだ。次の瞬間ハッとしていつものニタニタ顔へと取り繕う。
「そんじゃ、漢三の初めて…いただきます♡」
はぷ、と唇を合わせた。
ちゅっちゅっ、と唇を落として舌をねじ込む。
「は、…んっ」
漢三に覆い被さり布団に肘をついてキスを深める。
「ん…っ……ふ……はぁ…」
ぺろっと漢三の唇を舐めて体を起こす。
「…は…」
真っ赤になった漢三が顔を隠している。
する…と漢三の裸の胸を撫でて心臓の音を感じた。ドクドクと早鐘を打っている。
「緊張してんの?」
「…当たり前だろ」
顔を隠した腕からちらりと目だけ覗かせて呟いた。
ふー…と熱い息を吐く漢三に思わずきゅんとしてしまう。
「漢三…触って…?」
顔を隠す腕を取り自分の胸へと誘う。ぽよ、と当てて、上下にさすらせた。
「…ん♡」
乳首を擦らせて声を漏らす。
「ほら…いつもみたいに触ってや…」
両手を取り乳を揉ませる。
「…っばかやろ…」
耳まで真っ赤にして漢三は篠崎の乳を揉んだ。言われた通りに乳首をくにくにと親指で転がしてやった。
そうやってしばらく弄ってやる。
「ぁ、ん…っ♡」
ぴく、と腰が跳ねる。
「…あ…ズボン脱がせて?」
そう言って篠崎が腰を浮かせた。手をかけるとする、と下にズレて、んしょ、と篠崎が脱いで足で放り投げた。
だぼだぼのシャツ一枚でお腹の上にまた馬乗りになる。
「…し、篠崎…濡れてる」
「…えへ…気づいた?」
ぬちゅ、と腰を動かして愛液を擦り付けた。
「…えっちやろ」
「…ああ」
覗き込む篠崎に、漢三は視線を逸らして答えた。
「まあ言うてウチも久しぶりやから挿れる前に解して欲しいんやけど…やり方わからんよな?」
「言っただろ」
「ほんなら自分でするわ」
そう言って篠崎は自分の割れ目に指を沿わせた。
「…っ」
くりくり、と突起を刺激して、篠崎は腰を震わせる。
前屈みになるから長い髪が俺の腹にかかる。
「…っはぁ…♡」
びく、と体が震えて、動きが止まったかと思うと指を奥へと挿れたらしい。くちゅくちゅと水音が聞こえて来て、いてもたってもいられなくなった。
「…篠崎」
「ぁ♡…ん?」
「俺にもさせてくれ」
「…ん、ええよ」
す、と篠崎がやりやすいようにシャツを持ち上げる。いつもならそこにある棒がなくて、ちょっと違和感を感じた。
手を伸ばしたがどうしたらいいのかわからない。
「…わるい、教えてくれ」
「んふ…」
ここをな、と篠崎の小さな手がリードして豆のように小さな突起を撫でさせる。
こり、と優しく擦ると篠崎がびくりと腰を揺らした。
「あ♡ん、そんなかんじ…」
くるくると撫でてやるとびくびくと腰が跳ねた。気持ちいいんだろうか?
「んっ、んっ♡そんな、激しくせんといてや…っ♡」
これで激しいのか…
「は、ぁ…♡」
「奥はどう触ったらいい?」
「ん♡ちょ、と待って…」
ぴく、ぴく、と震える篠崎が一息ついた。
「おく、奥は…ここのとこから挿れてや…」
中指が誘われて穴に触れる。ひだが重なっていて分かりにくいが、誘われるままに挿れた。
「中熱っつ…」
「は…そこで、こう…中ほぐすみたいに動かしてや…優しくな…」
ほぐすのには慣れている。いつものようにゆっくりと優しく指を動かした。
「…っん、そ、そう…」
「中はあんまり気持ちよくないか?」
「気持ちええとこは…まだ教えてないからな…」
「そうか」
「うん…中挿れたまま指先丸めてみて?」
「こうか?」
「んぁ♡」
きゅ、と布団についた篠崎の手が握られる。
「そ、そう…もっかい、もっかいやって…?とんとんってして…♡」
言われるままにとんとん、と優しく中を叩いてやる。
「あ♡あ♡…っあ♡」
ふるふると篠崎が震える。
「もっと、もっとやってや…♡」
とんとんとん、さっきよりちょっと強くなってしまった。
「あ、あ、あっ♡…っさ、さすがや漢三…っ」
「そ、そうかい」
「はぁ…♡…あかん、ウチだけ気持ちよくなっとるな…」
「それでいいよ」
「だめや。漢三もちゃんと気持ちよくならんと嫌や」
そう言って篠崎が体勢を変えた。
「…ちゃんと見とってな?」
そう告げて下に下がり漢三の陰茎に手を沿わせる。触らなくても固くなっていて、これが中に入ったら気持ちええんやろうなあ、と思った。
するする…と両手で表面を撫でて、ぎゅ、と片手で握って上下に扱く。
しばらくそうしていれば、先端から蜜が溢れて来てそれを舐めとった。
そのままはぷ、と口に頬張り、舌で舐る。小さな口に太い陰茎が溢れそうだった。
そんな光景を目の前にして、漢三はどうしようもなくなっていた。
挿れたくてたまらない。動きたい。思いっきり突き上げて声を上げさせたい。
そう思えど脚の痛みに引っ張られて我慢していた。
しかし興奮は収まらなくて息はどんどん荒くなる。
「…っ」
ふー…と静かに息を吐き出したところで篠崎がちゅぽんと口を離した。
「…わるい…ウチのもかまってもらってええ?」
もじもじと言い出した篠崎に即答する。
「ああ」
やりやすいように、と互い違いになって慰める。
篠崎の口に含まれる自分の陰茎を感じながら、漢三は目の前にある篠崎の女陰に指を挿れた。
「…っん♡」
とんとん、と先程のところを叩いてやると篠崎がびくつき、っは…と口から涎を垂らして震えた。
ぽとりと腹に垂れた篠崎の涎が冷たくて腰を震わせた。
そして思いついた。
体を少し起こしてそこに顔を近づける。ぺろ、と舐めてやった。
「ッ!」
びくん、と篠崎が反応したのをいいことに、漢三はそのままぺろぺろと舐め続ける。
どんどん愛液が溢れて来て、じゅるじゅるとそれを啜って舐め回した。
「あ♡あっ♡…っ♡…〜〜〜〜〜ッ!♡♡♡」
声にならない声をあげて篠崎がガクガクと腰を震わせる。
は、は、と息を整えて陰茎を舐められた。
いつもは上手なのに、女陰を舐められているからなのかグズグズになっている篠崎の口淫が愛しくて、小さな突起も優しく弄ってやりながら舌を中に挿れてくちゅくちゅと擦ってやった。
「ふぁあッ♡♡♡」
かくん、と膝が崩れる。べしゃ、と股間の下敷きになった。
「わ、わるい漢三…っ」
汗と涎でべちゃべちゃになった篠崎が慌てて退いて謝ってくる。
「ふは」
「う〜ごめんて…」
「気持ちよかったか?」
「…うん」
もじ…と股間を隠した篠崎が小さな声で言った。
「…中…欲しい」
ふ、と微笑んで言う。
「いいけど、お前が動けよ?」
「うん…」
「ほな…挿れるよ」
漢三の上にしゃがみ込んだ篠崎が言って、腰をゆっくりと下す。
くぱぁ、と指でそこを広げて飲み込んで行く。
「…ん…♡」
「…っ」
ずぶ、と全部挿入って一息ついた。
篠崎はぶるりと腰を震わせる。
「は…♡」
「やっぱ中熱いな…」
「れ、冷静やな…漢三…」
「あー…悪い」
そう答えて手をこまねいて顔を寄せ、キスをした。
「理性トんだら傷開くからさ」
「そ、か…」
「それより…さっきからきゅんきゅん締め付けられてんだけど」
「ん♡う、動かんといて♡」
「ん〜?聞こえねえなあ」
「ぁ♡やん♡」
篠崎の頭を抱き寄せて唇を合わせたまま腰を振る。
「ん♡ん♡っん♡んぁ♡」
「…っ…は…っ」
「あぅ♡ゃ、んッ♡」
ズキ!と脚が痛んで腰を止めた。
「…っ悪りぃ、やっぱダメだわ」
「無理しよって…からに…っ」
この馬鹿…と篠崎が体を起こす。
垂れた髪の中には幸せそうな顔の篠崎が居た。
(え…?)
ばさ、と顔で髪を払ってもう一度見下ろして来た篠崎はいつもの顔をしていて、「動くよ」と一言告げて腰を振った。
ず…ずちゅ…ぱちゅっ
「ぁ♡ん…♡」
「…っ」
ゆっくりと上下するそれに刺激を受ける。
篠崎が腰を下ろして奥に当たる度、きゅん、と締め付けられて気持ちがいい。
「ん♡……っはぁ♡…ん…♡」
たゆん、たゆんと胸が揺れる。手を伸ばして触ると篠崎は前屈みになってくれた。
きゅ、と乳首をつまみ上げるとびく、と震えて、またきゅんと締め付けられる。
「篠崎…」
「…かんぞ…んはッ♡」
気が抜けたのか腰が落ちてとちゅ、と奥に当たった。
きゅん、きゅんと締め付けがすごい。
あーーー…くそ…。
もどかしい。
「篠崎、来て」
「…ん…」
ぎゅ、と抱きしめてやる。豊満な胸が押し潰されていつもより顔が遠い。
「キス…してくれ」
体を起こすのがキツくて篠崎にねだった。
こく、と頷いて唇が合わせられる。
ぬるん、と穴から肉棒が抜けた。
「…ッ♡……ん…っ…」
「…は…悪い、抜けちまった」
「ん、ええよ……ん……は、ぁ…んぅ…♡」
は、と長く絡められていた舌が名残惜しそうに離れる。篠崎が聞いて来た。
「…イきたい?」
「…お前は?」
「…実はもう何度もイッとる…」
「うそだろ…?」
「ほんと」
「ーーーっ」
がりがり、と頭を掻いて小さな声で呟いた。
「…気づかなかった」
「だってウチだけ気持ちよくなって…不公平やん」
「もっとちゃんと気持ちいいって言えよ」
「だって…」
「俺もちゃんと気持ちいいから」
「うそ」
「…実は物足りん」
「やっぱりな…」
そう言って篠崎は俺の膝を立てさせて、その間に入った。
「しゃあないからたまには手だけでイかせたる」
「…久しぶりだな」
「んふ、何年ぶりやろ」
いつも口とか中ばっかやったからな、と篠崎が両手で竿を擦る。愛液がまとわりついて、ぬちぬちと音を立てた。
「篠崎、ちょっと体勢変えさせてくれ」
「ん?ええよ」
肘を立てて上半身を起こした。
「これでよく見える」
「…そうやね」
微笑んだ篠崎がぬるりと扱く。
ぬちゅ…ぬちゅ…と水音だけが響く。ちら、と篠崎が漢三を見ると、漢三は視線に気付いた。
「どうした?」
「ん…いや、なんも?」
「そうか」
「…」
またしばらく黙って擦られる。
ちゅくちゅくっと早められてぴくりと腰が震えた。
「漢三…」
「ん?」
「あんな、助けてくれてありがとうな」
「あ、おう」
切り出し方に対して、何だそんなことかと拍子抜けした。
「…あん時も、七緒ん時も、…伍代ん時も…ウチはおまんに助けられてばっかやな」
篠崎は困ったように眉を下げて笑った。
「そんなに弱いつもりはないんやけど…でもいつも漢三はウチのこと助けてくれるな」
「そりゃあ…」
「しー。…言わんでもわかる」
「…」
「…漢三は…ウチみたいなんとずっと一緒に居ってええんかや?」
「そう思ってるからこうしてんだろ」
「…ふ、そうやね」
馬鹿なこと聞いたわ、ごめん。と呟いて俯いた篠崎が、ん。と顔を上げてキスを待った。
篠崎の頭を抱き寄せて軽くキスをした。
「…もっと」
「ん」
ちゅ、と唇が触れて離れる。
「……もっと」
はぷ、と唇に噛み付いて腔内を撫でた。
「ん………んっ…」
「…はァ…っ…ん!?」
篠崎がガバッと頭を掻き抱いてきた。途端にぐちゅぐちゅと中を荒らされる。貪るようにキスを深められて息ができない。
「ん、んッ……ッ…んん…!」
トントン、と篠崎の肩を叩くと、ぷぁ、と唇が離れた。
「これでこないだのはチャラな」
んべ、と舌を出された。
「……!」
(お前をくれって言ったの覚えてたのか…?忘れろって自分が言ったくせに…)
「さ、続きしよ」
愛液が少し乾いてきたのか篠崎は涎を垂らした。水気を帯びたそれがまた扱かれて、カリの繋ぎ目をヌルヌルと指先でなぞられる。
「…っ」
「気持ちい?」
「ああ」
「ここは?」
先端をくじられる。蜜が溢れる尿道に、小指をひっかけてはちゅぷ、と押し込まれる。
「き、もちいい」
熱い息を吐く。
「そか。」
そう言ってカリと尿道を擦られる。
息をつめた。
良いところを撫でられるたび、びく、と膝が跳ねる。
「ふふ、漢三はここ好きやもんなあ?」
「言うな…馬鹿…っ」
ずく、と胸が締まる。気持ち良くて思考がままならない。
「は、ぁ…ッ…っ」
かく、と腰が動いてしまう。握って欲しい、と思った途端、篠崎が竿を握ってくれた。でも手は動かしてくれない。
「欲しいんやろ?言うてみ?」
「……くれ」
「ん〜?そんだけじゃ分からんなあ」
「扱いてくれ」
「もっとすけべな感じに言うてや」
「…んだよそれ……ぉ、お前の手で握って、扱いて…イかせてくれ…たのむ…イきたい…」
「ん、合格」
ちゅ、と額にキスされて握った手が上下に動かされる。
ぐちゅ、ぐちゅ、と水音が鳴る。だんだん早められて、でも握る力は弱い。
「篠崎…」
「ん〜?」
「もっと…強くしてくれ」
「んふ、良い子」
ぐちゅぐちゅっと強く握って扱かれる。
「…っ!」
快感に背筋を反らした。
「気持ちええ?言うてや、漢三」
「きもち…っきもちいい…っ篠崎…っ」
は、はっと息が切れる。上半身を立てて両手を布団につき腰を揺らした。
「篠崎…篠崎っ…あ、ぃ、イく…ッ」
ぴた、と手が止まった。
「…っ…?…な、んで…っ」
「その顔が見たかっただけ♡」
ぐちゅぐちゅぐちゅ!とキツく握ったまま根元まで下ろして扱かれる。あっと言う間に達してしまった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
「あは…!んふふ、いっぱい出た」
ほら、と篠崎がべとべとになった手を見せつけてくる。
「あ、ああ…」
くた…とへたりこんだ。
「ふふ」
「ぁ…っ!?」
びくん!と体が反る。
「ちょ、待っ」
竿を握られたまま、イッたばかりで敏感な先端を手のひらでくるくると撫でられた。
「ぁ、だめ、ダメだって!…ッ、ぅ、あ…!」
ガクガク、と膝が震えて快楽の波が来る。
「ぁ、ひ…っ…く、ぅあ…っ……ッ!」
「もっかいイッてや」
じわ、と生理的な涙が出る。ギュ、と目を瞑って快感に耐えようとした。
「ふ、ぅ…ッ…は、あ、あっ…あ、あぁッ!!」
ぴゅる、と先程よりは少なめの白濁が飛ぶ。
「あは、出た」
「ひぐ、…っう!も、もうやめてくれ…っダメだ、ダメ、ダメだって!」
まだ篠崎は手を止めてくれない。それどころかくるくると撫でる手を早められた。
「あ、ぁっあ、あ…!…あーーーーーッ!♡」
ぷしゃ、と白濁の混じった潮を吹いた。
やっと篠崎は手を止めてくれて、漢三はぐったりと布団に倒れ込む。
篠崎は満足そうに漢三の頭を撫でた。
ともだちにシェアしよう!