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なんだろう

ぽつ、と雨が降る。ざあと降り出してしまい、畑を耕していた男達は慌てて家へと帰っていった。 (かんぞう、かんぞう…) 山の麓の祠にて、こてん、と首を傾げる。と言っても体などとうにないのだが。 くるくる、とその場で弧を描きながら思考する。 (なんだろう。かんぞう…?かんぞうってなんだろう) もう何処にもいないのに。忘れてしまった恋人のような存在。あの日願った望む一つも。もう叶わない。 そんなことすら分からないまま、篠崎宗旦だったものは雨を降らせた。

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