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第15話

壁の絵画、一枚一枚に、下に細長いボードがあり、その絵画の名前がある。 男性たちは食い入るように僕の絵画を腕を組んで見つめている。 一人の紳士が僕に気がついた。 「絵のモデルの子だね」 「はい。先生の助手をさせて頂いています」 その方が見ていたのはまだ初期の頃の僕。 『まどろみ』 という名の、初めて、人前でオナニーをし、頭が真っ白になっている僕。 床に座り込み、勃起も隠さず、白濁を前に蕩けそうな顔をしている。 「オナニーを人に見せたの、これが初めてで...最初、とても緊張しました」 紳士が僕の腰に手を回した。 「そうか。恥ずかしかったかい?」 「最初は...でも途中から見られる悦びというか...なにも考えられなくなりました」 「いいね...とてもいい。この絵は幾らだね?」 「あ、その辺は僕は分からないので、先生を呼んできます」 慌てて、受付にいる先生のもとへ向かう。 絵画の説明のあとは必ず先生を呼んだ。 なにしろ、絵画に金額が設定されてはいない。 次々に僕は声を掛けられ、絵画の説明に当たった。 『初めての挿入』 背面座位で脚を開き、先生は俯き、顔は分からないが、先生の勃起が僕のお尻に刺さっていて、僕は頬を染め、苦しいような切ない表情を浮かべている。 数人がその絵に群がっていた。 「背面座位、て女性とした事がなくて、新鮮でした」 この即売会のサブタイトルは、ノンケが目覚めたとき。 僕は未だノンケ、の意味は知らないのだけど、画家や絵画の専門用語だから知らなくていい、と先生は教えてくれた。 ここにいる客はどうやらみんながみんなゲイらしく、ゲイではない僕の痴態に興味津々のようだった。 「お尻に挿れる、なんて一生ないと思ってましたが、こんなに気持ちいいなんて、てびっくりしました」 溌剌とした僕の笑顔に、お客様は僕の腰を抱きながら、絵画の金額を聞いてくる。 再び、先生を呼びに行った。 「お前のお陰で大忙しだな」 「すみません」 「嬉しい悲鳴だよ」 先生がにっこり微笑んだ。

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