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第18話
僕が女なら手を繋ぐなり腕を絡ませるなどして、隣のビルの即売会に戻るのだが...
行き交う人達の手前、無理だ。
「セックス、凄くお上手ですね、トイレでしたの、初めてだったから緊張したけど、お客様が上手いから...緊張も忘れちゃいました」
敢えて照れ臭げに指で髪を耳に掛け、俯いた。
「トイレでのセックス、初めてだったのかい?」
「...気持ちよくしてくれて、ありがとうございました」
紳士の瞳を見つめて、笑顔。
もちろん、営業スマイル。
紳士は会場に着くなり、一枚の絵に群がっているお客様たちをお相手し、会話している先生の元へ歩み寄っていた。
「トイレでやらせたアバズレとか言われないよね....」
ヒヤヒヤしながら、後を追う。
いつの間にか数枚しか残っていなかった絵画を全て購入する、と紳士が言い放った。
唖然としていると、他の客からブーイングの声だ。
「まだ一枚も購入していないというのに!」
「こういうものは早い者勝ちだ」
先生もびっくりしていたが、
「また即売会は開きますので、ここは穏便に」
客同士がピリピリしたムードの中、客たちを鎮めるため、必死なようだ。
結局、さっきの紳士が残り僅かだった数枚の僕がモデルの絵画を全て購入した。
受付で先生と並んだが、その額に目を丸くした。
現金で500万がドン、とテーブルに置かれ、郵送を依頼した。
紳士は僕に、
「今日はどうもありがとう」
「ありがとうございました、こちらこそ...」
笑顔を浮かべ、僕も引き攣りそうになりながら笑顔を返した。
お客様たちも居なくなり、
「お前、どういう手を使ったんだ?」
「手というか...口とお尻を使いました」
「随分、トイレが長いとは思ったけど、やっぱりな」
先生は売り上げの計算やら住所などを纏めた書類やらを手元に、吹き出し、笑った。
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