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第20話
先生は男性を描く傍ら、抽象画をメインにした画家らしく、長谷部広隆名義のホームページは存在した。
僕の提案で、もう1つホームページを作成した。
先生の名前はHIRO、助手として、僕はYu
互いに顔写真ではなく、なかなか僕たちによく似たイラスト。
先生の提案で僕はブログも書き始めた。
なんて事はない、日常のブログ。
今日は掃除は洗剤は使わず、重曹を使っていること、これがなかなか汚れも落ちるし、洗剤より安上がりになること、愛用の重曹の写真をアップした。
顔を映した訳でもない、薬局で購入した重曹の写真なのだが、何故か、可愛い、の返信が並ぶ。
「....重曹って可愛いですかね?」
先生もパソコンを覗き込んだ。
「いや、重曹は可愛くはないな、お前が可愛いって意味じゃないか?」
「重曹を愛用していることを書いただけなのに!?」
先生は答えずにただ微笑んだ。
しばらくすると、ピコン、と音がし、メールが届いた。
開くと、デッサンモデルがしたい、18歳からのメールだった。
ご丁寧に身長や体重、口元を隠した写メが添えられている。
「165cm、47kgか...悪くはないな」
「口元は分かりませんが、目元は意思が強そうで綺麗な瞳ですね」
二日後、面接となった。
いざ、写メの彼と先生と二人、ソファに並び、ご対面したが....若い。
18なのだし、若いのは当たり前だが、何となく幼い。
「伊藤圭介くん、だったかな、本当に18歳?」
先生も疑問に思ったようだ。
圭介は固く閉じた膝の上に緊張の面持ちで握り拳を置いている。
「はい、18です」
「身分証明書はある?」
圭介が口を閉ざした。
「申し訳ないけど、18歳以上でないと...」
「あと二ヶ月で18です!身分証は本当に忘れてきてありませんが、本当です!信じてください!」
切羽詰まったように圭介が前のめりになった。
「...ところで、うちのアトリエをどうやって知ったの?」
先生がため息混じりに尋ねた。
「掲示板で知り合った男性です」
「...掲示板?」
僕が尋ねると圭介が頷いた。
「ゲイの掲示板で、売り専も年齢的に無理だって断られた事を話したら、ここを教えて貰いました」
「....ということは君はゲイ?」
先生の問いに、圭介は、はい、と答えた。
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