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第27話

先生にお借りしたスウェットに着替えた沢村さんを引き連れ、ダイニングへと戻った。 「あ、温め直さないと」 僕は慌てたが、なにやら、先生と圭介の箸が動き、勝手にもぐもぐ食べている。 「ああ、先に頂いてるよ、祐希」 先生の隣で味噌汁を口元に運ぶ圭介は上目遣い。僕を睨むかのような険しい目付き...。 まさか、沢村さんをフェラしたことがバレた...? 「...ドジなんですね、祐希さん。たっちゃん、火傷しなかった?大丈夫?」 「ああ、問題ないよ、お陰でスッキリしたし....あ、シャワーありがとうございました、スウェットまでお借りして」 皮肉めいた圭介のセリフに一瞬、ムカッとした。僕は先生に足を引っ掛けられただけでドジった訳じゃない! 一方、沢村さんの恍惚した笑顔が一変し、狼狽えているのがわかる。 「いえ、祐希のやらかした事ですし。スーツは明日、朝にでもクリーニングに出しますね。明日は土曜日ですがお仕事は?」 「休みです」 その間、僕は沢村さんの分の食事を急いで温めた。 「ああ...美味いなあ、西垣くんは料理も上手いんだね」 隣の沢村さんがハンバーグを頬張った後、にこやかに話しかけてきた。 「...料理も、とは?」 圭介の一言にギクッとした。 「え?あ、ああ、彼は営業部だったんだ。俺の会社とも取り引きがあったけど、彼は営業のセンスもあってな」 「...ふーん。よくわからない」 まだ高校生の圭介にはわからない大人の事情。 圭介は大きめに刻んだハンバーグを頬張った。 「上手だったよ、フェラ」 圭介が黙々と食事をしている最中、隣の沢村さんが耳元でこっそり呟いた。 不意に先生と目が合ったが、なにやら、ニヤニヤしている。 この調子で圭介がここを居心地悪く感じさせたらいいんだよね...。 そして、沢村さんは実家から追い出された圭介をかくまうと言っていたし、気が強そうで可愛げのない圭介と暮らすのは僕も正直、嫌だ、頑張ろう! 僕もまた、ハンバーグを切り分け、頬張った。

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