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第34話
沢村さんのスーツもクリーニングに取りに行き、スーパーで買い物も終え、夕飯の為にキッチンに立つ僕は覚悟を決めていた。
本来なら、辞表を書くべきなのかもしれないけれど...僕は先生の助手を辞め、沢村さんに甘えるつもりだ。
圭介や沢村さんもいるが、先生との最後の晩餐。
それぞれが箸を動かし食事の最中、僕は1人、箸を置いた。
「...先生、お話があります」
「どうした、祐希、かしこまって」
先生は俯き、食事の箸を止めはしない。
「...今日で、僕はもう辞めさせてください」
先生がようやく、箸を止め、真っ直ぐな瞳の僕を見た。
「...辞めてどうするつもりだ?仕事も住むところも」
「僕がしばらく祐希の面倒を見ます」
突然、沢村さんが割り込んで来て、驚愕で沢村さんを見たのは僕だけじゃない、圭介もだ。
「どういうこと!?俺と別れるつもりなの、たっちゃん!」
「ああ。お前には先生がいるし問題ないだろう」
ああ...終わった。
先生との日々、決して嫌じゃなかった。
それなのに。
「よくやったな、祐希」
先生の明るい声に、え?と伏せた顔を上げる。
先生は笑顔だった。
「...険悪だったのに、喧嘩してましたよね...?僕と先生」
「ああ。その方が祐希も沢村を誘惑しやすいだろうと思ってな」
「!」
狡猾な先生の笑みに唖然。
険悪なムードはわざと...!?
「じゃ、じゃあ、なんで、圭介と寝たんですか?それに絵も描いたり...」
「もしかしたら、沢村さんだけでなく、祐希も焼きもち妬くかと思ってな。17のわりに祐希より遥かに緩かった。ヤリマンを卒業して、もう少し、穴を鍛えた方がいいぞ、圭介。今は若いからいいが、いずれ、一層ガバガバになって、誰も相手にしなくなる」
平然としつつも辛辣な先生の言葉にポカン、と圭介は口を開けていたが、突然、泣き出した。
慌てて、圭介に駆け寄ったのは、沢村さんだ。
「泣くなよ、圭介」
「だって...だって...」
「今のうちにヤリマンを卒業すれば問題ない。みんな、言わずにいてくれたんだろう、優しいな」
先生のトドメの一言に、圭介はまた、泣き出し、沢村さんが必死に圭介を慰めた。
が、沢村さんは決して、圭介に、
「そんな事はないよ」
とは言わない。
男性に挿れた事もないし、挿れたいとも思わないけれど、先生の指摘は当たってる、という事なのだろうか...。
ちょっぴり、圭介が可哀想にも思うけど。
先生が言う通り緩いのなら...散々、ヤリまくった事実は圭介から聞いている。
自業自得なのかも、と僕は泣きじゃくる圭介と宥める沢村さんを見つめた。
先生が描いた圭介の裸体の一枚は、圭介が沢村さんときちんと付き合うと決めた時を思い、描いた事も知った。
木製の椅子の背もたれに手を置き、背後から描かれた振り向きざまの笑顔の圭介。
沢村さんと共にここを出ていく圭介、2人に先生はその一枚の絵画をプレゼントした。
しばらくは沢村さんのマンションに厄介になるらしい。
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