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悲恋。(2)

 だからだろう。宝がここへ訪れた当初、電気を点けようとした時、丞が点けるなと言ったのは――。  その彼は今、深い眠りについている。  それでも熱はまだ下がらない。これは満月の日の効果なのかはわからないが、もしかすると傷口にばい菌が入った所為もあるかもしれない。  宝は水が入った洗面器に氷を入れ、タオルに染みこませると、胸元のボタンを緩め、吹き出る汗を拭っていく……。 「……枇々木?」  宝を呼ぶ苦しそうな声がして顔を上げれば、丞の目がうっすらと開いていく。  どうやら彼は目を覚ましたらしい。 「椎名さん、よかった。目が覚め……あっ」  宝が、丞に気分はどうかと訊ねようとした時だ。ふいに身体が反転する。  気がつけば、宝はベッドの上で、丞の腕に捕らわれていた。 「椎名さん? どうしっ!」

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